やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「人間国宝の夕べ」 2022/10/26,27 八千代座②

その①の続きです

 

26日のこと。

幕間が終わり二部の幕が開き始めた時、市内放送が始まってしまい(笑)💦

他の劇場のように、外からの音を遮断してるわけではないし、まんま聞こえてくるので(笑)まだ開く前なら終わるまで待ってから開けられるものの、開けつつあるもうすぐ開ききろうというタイミング😂どうされるんだろうなぁと思っていたら、勝国さんが演奏を始め、曲が始まりました。

…後から思うと、そういう放送はゆっくり話すから終わるまでに時間がかかるし、もしおわるのを待っていたら間延びしすぎてお客さんが笑いだしてしまうような雰囲気に鳴ってたかもしれず、舞台を率いる人の判断の凄さを感じた瞬間でした。

 

で、演奏が続いているうちに、最初のうちは放送の方に引っ張られて少し笑ってる人もいたものの、そのうち演奏に集中している、この場を作り出している演者の方に引っ張られ私達もそちらに意識を向けるようになっていった感じがしていました。

 

〈吾妻八景〉

今年5月の30周年記念の公演の際、事前に勝国さんがいらっしゃらないことを知らずに行ったため、幕が開き舞台上に勝国さん不在なことが見てわかるものの、それでも何度も探してしまい、心にぽっかり穴が空いたようでした。

玉さまの今月のコメント に、「杵屋勝国先生の最後の八千代座」と書かれていて、そういう流れなのだな、と。

 

演奏のみというのは、玉さまの公演ではなかなかないけれど、今回たっぷりと聴くことができて、改めて素晴らしいものなんだなぁと、気づきました。曲のことや、三味線に詳しくないけれど、あぁ、良いものだなぁと身体に染み渡るような演奏で。八千代座という音がそのまま聴こえる場所での、特別な時間でした。

 

勝国さんの演奏、音はもちろんのこと、演奏中の力の抜け加減とか、手の動き、それらも大好きで、玉さまが舞台上にいらっしゃらないときはいつも勝国さんから目が離せず、やっぱり唯一無二の存在の方。そこに勝四郎さんの唄を聴くことが、玉さまの公演で楽しみにしていることの大きなひとつだったので、とても寂しい、寂しくなる、という気がしてます。

もし、叶うことならまた勝国さんの演奏を聴きたい、そう願ってます。

 

 

〈三曲糸の調べ〉

勝国さんたちの演奏と、玉さまの拵えありでの阿古屋の三曲。登場された阿古屋の玉さまから光が溢れているような眩しさで✨衣装の華やかさとお化粧された玉さま、そういった外に見えることだけではなくて、阿古屋の内側からの光というか、阿古屋が強烈に人を惹き付けるというか。客席からも思わず声が出てしまうほど。

最初はお箏。一階で観ていた27日は、爪をつけるときに口元に手を添える仕草もハッとするような美しさで。冒頭をお歌いになるときの、声が素敵で、すぐ終わってしまうのでもっと聞いていたい💦

弾いている時の手、指のしなりも、見ているのが大好きで、もちろん音楽そのものも。

そして次の三味線。勝国さんが、同時に弾いたりずらしての弾きを、玉さまの方を見るように身体を少しむけているけれど、勝国さんの位置からはたぶん右腕の様子しかわからないのだろうけど、意識をそちらに集中して向けている、そんな感じがわかりました。

最後は胡弓。ここまでは演奏、唄の方たちも見ていたものの、玉さまの阿古屋が胡弓を弾き出すと、もう目が離せなくなり耳も釘付け(?)のようになってしまう。弓がたわわにしなりながら弾く姿があんなにも素敵な方っているのかな。それほど毎回玉さまの胡弓には魅了され、また阿古屋としての心のうちを語るような音に、虜になってしまう。「阿古屋を観ることができてよかった」と曲を弾くという今回のような形の時にも、すべてを持っていかれるくらい素晴らしかったです。

 

〈カーテンコール〉

曲が弾き終わると同時に幕を完全に閉じるようにされているので、阿古屋の世界を壊さぬように余白を残さない、そんな気もしました。

そして拍手は止まらず、しばらくして再び幕を開けてくださいました。胡弓は外し、真ん中にお座りになったままの阿古屋の玉さま。上手下手、そして2階、一階の奥の方と隅々まで観客の方を見て、お辞儀をしてくださいます。

手を唄、三味線の方たちへ向けると、演奏の皆さんへの拍手がひときわ大きくなります。そしてもう一度玉さまがお辞儀をされて、幕が閉まりました。

26日は2回、27日は1回のカーテンコール。阿古屋の衣装なのでそこから立ち上がることはおそらく簡単なことではないだろうし、花道をお使いになることはありませんでしたが、心から満たされる今回の八千代座公演でした!

 

〈写真集のこと〉

八千代座に行く前に、なんとか読み終えようと思ってすべて読みました。全ページ、パタンと見開きにできるようになっていて、写真の部分もたくさん。昔の写真と今現在の写真で、同じ方が玉さまと写ってらして、どなただろうと思っていたら、八千代座のことを最初に玉さまに知ってもらおうとお手紙を送った方でした。写真リストと読むページから、そのことはわかるのですが、写真を見ているだけでも、その「なにか」を感じます。八千代座の歴史、単に並べただけの歴史などではなく、時代と人が感じられるもので、本当に中身の濃い、ただ美しくきりとったものではない、素晴らしい写真集でした。

また傳左衛門さん、傳次郎さん、玉さまの対談も乗っていて、こちらがまた素晴らしい!!筋書や、なにかのインタビューで、舞台を創る側でないとわからないこと、100円でも黒字にするという経営の視点からも、演じる者だからこそわかっておくべきこと、どう同じ舞台を創っていくものとして関わるか、ほかにも何気ない一言までもあまりにも金言の嵐で物凄い「本」。もっとたくさんの人に広まったら良いなと思います!