やっぱりLiveが好き

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「三月大歌舞伎〈第三部〉髑髏尼」2023/3/15 歌舞伎座

お久しぶりの更新です😂

八千代座以降も玉さまの観劇はしていたものの、今回無性に書きたくなったのでまた再開します♪

 

新作ではないものの、過去の上演回数の少なさを思うとほぼ新作にも近いような感じのする今回の「髑髏尼」

ざっとあらすじは読んでいたものの、予想とはだいぶ違って演劇的要素の強い作品でした。

救いのあるお話ではなく、そっちにいっちゃだめだー!っと思うとおりに行ってしまうので💦

わかりやすい「歌舞伎」が好きな方には受け入れられにくいだろうなぁと思いました。

歌舞伎というジャンルではなく、もっと幅広い「演劇」としては似たような作品も過去に見たことがあり、「あり」だと私は思いました。

 

筋書に、玉さまが今回の作品の演出(だったかな?)について書かれているページがまず最初にあり、そこには六代目歌右衛門さんと十七代目勘三郎さんが演じた時に観てとても印象に残っていて今回の上演にいたった、というようなことが書かれていたと思うんですが、

そのお二人でこの作品を観た時に感じたことをもっと知りたくなった…というのも、それだけこの作品が繊細で難しいところがあると思ったからで。

演じる人や演出がよくなければつまらない作品になってしまう、だけど本当にうまく歯車があったときに鳥肌の立つような凄い印象を残すものになるような物語でした。

 

幕開きの音楽から「これはなにかいつもの作品と違う」という雰囲気で、男女蔵さんは烏男という不気味さと、同じく理解されない七兵衛と同じような者であり、違う次元にいるような感じもあった難しい役を見事に演じてらしたなぁと感じました。

 

そして七兵衛。この役が玉さまの髑髏尼と対峙する役だとも知らず、どこまで絡んでいくんだろうと思いながら見てました💦

あと、配役を見ていかなかったので見終わってもどなたが演じてらしたのかわからず、「この嫌われ役ともいえる七兵衛を演じる方は大変だったなぁ」と思って筋書を見たらまさかの福之助さん‼️

 

あらかじめ福之助さんだと知らずにいたことで、フラットに観れてよかったなと思います。醜く生まれた自分に苦悩しあ挙げ句、髑髏尼への想いが破滅へ向かってしまう役。最後は自分勝手の行為に見えて、ほんと「嫌な(奴)役」で終わってしまうかもしれないし、最後の最後では少しそういう想いがわきながら見てました😅

でも、今まで何の願いも叶わずにひとりで生きてきたことやその辛さ、母親から「自分の顔を見るな」と言われたことをこの日まで守り続ける素直さ、(そもそもは)髑髏尼を想う純粋な気持ち、そういったところがあるから七兵衛が単に嫌なやつにならない、しないことが出来るんだろうと思うけれど、それらを演じることは凄く大変だったと思うけど、丁寧に演じられてたように思います。

演劇人としての幅が確実にぐーーーんと伸びた、広がったでしょうし、玉さまと共演するたびに素直に取り組み続けてこられた成果が本当にそのまま現れていて、なんて素敵で凄い方なんだろうと思いました。

 

髑髏尼の夫、(亡霊の)平重衡役の愛之助さん。出てこられた瞬間に「仁左衛門さん?」と思ったくらいお顔がそっくりで、とてもかっこよく、重衡の無念と恨みや子への想いもよく現れていてとても良かったです。

 

その重衡が現れる場面に後ろに同じように亡くなっていった源氏の兵士達が並んでいる様子が浮かび上がるんですが、その時の音や演出も良かったんです。例えるなら新感線の舞台でありそうな感じでもありました。

 

そして玉三郎さんの髑髏尼。消え入りそうな透明感がありつつ、子や夫への想い、復讐の念がとんでもなく強くて、七兵衛の告白に自分も七兵衛のことを見て知っていたこと、その姿に自分が想うところがあったこと、それを話している瞬間だけ二人がほんの少し心を通わせられ、なにかがふっとほどけたものの、それもつかの間のこと。

取り憑かれたような七兵衛の暴走により、「夫と子の元へいきたい」という想いが(ある意味)叶えられてしまい、単純に「(そうなって)よかった」とは言えない複雑な役を、本当に丁寧に演じてらっしゃったからこそ、そのままを観ていた私が受け取れたんだと思います。

 

チャレンジをし続ける人、壁を壊して解放し続ける人なんだということを、今回の舞台でも思ったし、なによりこの難しい本と役を福之助くんに任せてここまで演じきれる程演劇人としての伸び代をまた伸ばしてきた玉さまや今回演出に関わられた今井豊繁さんの素晴らしさを感じずにいられなかったです。

 

そして、福之助さん、千穐楽まできっとまだ進化していくと思うし、無事に完走していただきたい、と心から思いました!

 

あと、守若さんが冒頭場面でご出演されてて、しばらく舞台には出てらっしゃらなかったと思うんですが、そのお元気な姿と完璧な老婆の姿に安心しました。

フェードアウトされてしまうんじゃないかと諦めモードでいたけれど、見事に払拭されて嬉しかったです。

これからもお元気で舞台に立っていただきたいと願っています。