やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「坂東玉三郎 特別舞踊公演②」 5/18,19 八千代座

〈黒髪〉

口上が終わり、今までなら緞帳がしまるところを、今回は玉さまが説明して下さったとおり、照明が暗くなることがその代わりとなりました。その後少しだけ舞台上が明るくなり、お弟子さんたちによって小道具や楽器等、次の幕の準備が進んでおわったとき、地方さん達がお入りになって少しの間を置いて、客席後方の揚幕が開き、桜姫の拵えの玉さまが入ってこられました。

…幕が閉まらないということ、そのまま準備の時間になることは、やっぱり明確に幕の終わりと始まりという感じはしなかったので、桜姫が揚幕から出てこられること、今までとは違う場所を使うことが、違う時空間が始まったことを知らせる役割をしていたように感じます。まずこの事に驚いたし、なるほど、と思ったけども、あくまで私の感じたことなのでその意図があるのかはわかりません(笑)💦

公演のパンフレットの『坂東玉三郎が語る黒髪』の中で、

「『黒髪』という曲は長唄地唄の両方にあり、私はこれまで、おもに地唄を使って演じてきましたが、今回は長唄の方でご覧いただきます」

と書かれているとおり、今回の唄は勝四郎さんがつとめてらっしゃいました。

…曲に対して拵えと人物設定、そういったものが全部決まっている、固定されてるものかと思ってたら、そういうわけじゃなかったというのも初めて知りました😂唄の芯を捉えていたら、どういう人物を演じるかも自由なんですねぇ。なので、地唄で演じられた時とは全く違い、今回は桜姫ということにも納得でした。

 

そして花道を歩いてこられると、華やかな装いとは裏腹に寂しさや侘しさが漂い、その空間と空気が、桜姫の感じているものにあっという間になっている…勝四郎さんのお声なので、地唄を聴いたときの感じとはやっぱり違い、それぞれで創られる世界ともに好きだなぁと思ったし、口上で玉さまが音楽が重要、と仰ってたことにうなずきしかなかったです。

最後の場面の桜姫は、見ていると胸が締め付けられるような気持ちで。もう一度あの場面を観れたらなぁ、と思います。

 

〈藤娘〉

今回はいつもより口上が長めなので、口上と黒髪の間の幕間がなかったことで時間が短縮にもなったでしょうし、黒髪と藤娘の間で30分と長めに取ってくださって、全体のバランスが考えられた公演だなぁと思いました。

以前は映像×舞踊公演だったので、八千代座で藤娘をすべて観るのは初めてだったかも。暗闇からパッと照明がつくと、眩い藤娘の玉さまが。そこに現れるのは知っているのに、その度に驚くしワクワクがあり…そしてこの両日の客席は、もしかしたら初めて玉さまをご覧になる方がいらしたのかもしれないけど、とにかく玉さまの登場、そして次の場面に「ひゃーっっ!!」という歓声✨ひときわ大きかった気がします。

その歓声も納得の美しさ。でもただ「美しい」じゃないんですよねぇ、玉さまは。

今回の大道具は八千代座の大きさに合わせて銀屏風に藤棚が描かれたもの。歌舞伎座のような大きな劇場なら違う大道具になるけれど、やっぱり八千代座には銀屏風で藤娘の世界を表すのが抜群に良いんだなぁと感じました。

玉さまの藤娘が踊っていくほどに、あの八千代座の空間、空気が『藤娘の世界』に埋め尽くされる、それを今回ほど感じたことはなかったです。藤娘の世界に引き込まれて、魅了されるというか。こんなに濃いものだったかなと思うほど。

そして今年のお正月、松竹座で藤娘がかかったときには後半『潮来』で踊ってらしたけれど、今回『藤音頭』で。衣装は潮来の時の白に藤の文様のもの。それがまた爽やかで。八千代座には藤音頭というのも納得でした。

途中で観客の方に挨拶をしてくださるとき、19日は上手へ目配せといったらちょっと違うかもしれないけど、観客が「きゃっっ‼️」となるような感じのしぐさがあり(笑)、それはもう可愛くて可愛くて😂

下手に来られたときも真ん中に戻られたときも、こんなに可愛い藤の精がおるんだろうか…と、心奪われっぱなし。華も可憐さも愛らしさもあって、あの空間中広がっていたものが儚くも終わっていく、最後に見上げる藤娘にそんな切なさを感じながら、それでも幸せな気持ちがからだいっぱいに広がり、本当に満たされた時間でした。

 

〈カーテンコール〉

揚幕に去っていった藤娘の玉さま。拍手がおさまらず、そのまま揚幕から舞台へ再び出てきてくださいました。幕がしまっても拍手は一切止まず、もう一度開き、今度は地方さんたちにも拍手。毎回このときにひときわ大きくなるのが、嬉しいことだなと勝手に感じてます。

そして三回目。幕が開くと玉さまは立ってらっしゃった気がしますが、記憶飛んでます💦花道の方へ出ることはなかったですが、前方の手前から2階、後ろまでちゃんと見てくださって、一番前の外花道でお辞儀された方うらやましかったなあ。

この時最後の方で、ひとり二人と観客の方が立ち始めたまま幕がしまり、拍手が止まないまま、一階も二階席の方もみんな立ち始めます。総立ち状態で幕が開き、玉さまを迎えたものの、「お座りになってください」というジェスチャーをされたので皆座ります(笑)八千代座で総スタオベは初めて経験したんですが、ほんとに熱烈であたたかくて気持ちと感謝があの空間にパンパンにつまったものでした。玉さまに皆の想いは伝わったかと思います。そして本当に、30年の幕が閉じました。

 

と、ここで終わりではなく、周辺情報の番外編、その③へ続きます