やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「坂東玉三郎 特別舞踊公演〈鶴亀・日本振袖始〉」8/24 南座

〈鶴亀〉

日替わりで配役が違い、この日千穐楽はA日程だったので、亀が福之助さん、鶴は固定で歌之助さんでした。

この後の演目のことを考えると(観て感じたことを思うと)福之助さんがこの役だったことで三人全員を一番いい形で拝見できたなぁと思います。

 

まず目に止まり、見入ってしまったのが、衣装。先月の口上で、装束が本番5日前に出来上がり届いたことを聞いていたので、どんな衣装かと思っていたけど、色、刺繍が美しく、立体感ももっとよーく見ていたかったほど素晴らしかった。

玉さまと一緒=指導されているということが頭にあるからかもしれないけど、それがあったとしても歌之助さん、福之助さんに感じたことは、品と意識。やってこられたことを最大限にだしてらっしゃるんだろうなというのが、なんだか肌で感じられるというかそれがすごく心地よかった。玉さまは華やかだけどそれよりも凛とした存在感が際立っていて、衣装も、その在り方も美しかった。

 

<日本振袖始>

玉雪さん功一さん達が出て来られて、最初はこの場面からだった!ということを思い出す(笑)始まれば思いだすのに忘れてるもんだなあと💦

 

そして稲田姫の登場。今回河合雪之丞さんを拝見できることも楽しみの一つでした。歌舞伎界からではない出演者の方というのも珍しく、面白い試みだなあと思ってました。

その雪之丞さんの稲田姫は、その心情を表す動きがとにかく細かくて繊細。歌舞伎役者さんとしてご活躍されていた時に、拝見したことがほんの少しあったかもしれないけど、今回ほど拝見したことがなかったので、その一つ一つのパーツがたくさん折り重なっての稲田姫に驚きました。

それが「型」に見えることもあるけど、ただの外側の型というより、心の表れとしてのその緻密さ、という感じ。

そしてその稲田姫に肘鉄をする玉雪さん(笑)ここは地味に好きな場面。

 

そして玉さまの岩長姫。お顔が見えない登場がゾクゾクする。多分、これは毎回そうだと思うんだけど、玉さまの印象が前回よりももっと良い!!!これに尽きる。「前回と同じ」という印象がいつも無い。踊りや表情の柔らかさ(この場合は酒に吸い寄せられていき深みにはまっていく様子や、酒に酔って踊る時とか)そういう表現がさらに深く感じられてる気がする。

よく、若い頃に体力などで活きていた部分が、年齢を重ねていくと、そちらは衰えるけど技術や身に付いているのものでカバーする、といった話があるけれど、そういう消去法的な、こっちがないからあっちで、といったものには全く感じられないのが玉さまの物凄いところだと思う。ご本人のなかではそういうことがあるのかもしれないけど、そんなもんじゃないんだよね、って言いたくなるほどなんです、いつも。なので「また素晴らしい玉さまの岩永姫を観た!!!」という感想です。

 

今回、一番衝撃を受けたのが、橋之助さん演じる「素戔嗚尊」。今まで菊之助さんの鮮やかな立ち廻りと頼もしさのあるこのお役を拝見したりしたけど、菊之助さんとは全く違うことを感じました。

というのも、この「役として」ということより、もっとベースにあるであろう、橋之助さんの『熱量』、これがとてつもなく凄かった。

今までこの『熱量』に圧倒されたのが「熱海殺人事件」で、昔から演じてらした風間杜夫さん平田満さん、そして若い役者さん、紀伊国屋ホールという場所、それらすべてが一体となって感じた熱量、全体量としてのものだった。

だけど、今回は橋之助さんたった一人。登場されてそのお姿を拝見しただけで、圧倒的な熱量がうわーっと自分の中になだれ込んできて、話や誰かの心情を思ったり思いを馳せたり、共感したり考えたり、そんなことは何もしないでも、ただその存在だけで自分の魂が震えるはっきりとした感覚があった。視界に入るたびにその震えが起こり涙が勝手にあふれて止まらなくなる。心で感じる、思う、そんなことをふっとばした、こんなにも直接的な感動、響く震えは初めて感じました。

これはどんなにベテランの、どんなに上手いとされる役者さんでも、やろうと思って起こすことはできないんだと思う。橋之助さんが、この時に、どれだけの想い、気概を持って、どれだけまっすぐに自分と役とこの場に、ご自身の気持ちと在り方をまっすぐに立て最大限のそれを持って舞台へ向かい、立ったのか、それがこれだけ凄い反応を起こしたんだと思う。

舞台のカンパニー全体ではなく、人が一人でこれだけのことを巻き起こせる、こんなとてつもない在り方ができる、ということを確実に証明し、それを受けとらせていただいたし、私自身「魂の震え」というものは体感としては良くわからなかったのに、この時は確実に「それ」だったといえる。

人間はどれだけ無限の可能性と大きさをもったものなのか、限界なんてなくて、本当に素晴らしいものを持っているものなんだと思う。そういった場、空間を共有できて、本当に凄い体験をした、と思います。

 

・・・そんなわけで、素戔嗚尊をなるべく視界に入れないようにしていたのものの、それでもその存在に反応するのか涙がでてきてしまい、物凄く意識的に玉さまを観るというその後の観劇になったのでした💦

 

<カーテンコール>

七月に続き、八月の千穐楽も拍手は止まらず(私も止める気はさらさらなく(笑))カーテンコールへ。ここでも私は魂の震えが止まらず、泣きながら拍手をしていたので、記憶が薄い(笑)でも、八岐大蛇の分身の皆様も並んでくださり、拍手を送れたこと、橋之助さん福之助さん歌之助さんにも盛大な拍手が送られ、もちろん玉さまにも。雪之丞さんも場面的にいらしたはずだと思うけど記憶が飛んでいて覚えていないのです💦

でも、皆さんへ大きな拍手が送られ素晴らしいカーテンコールでした。