やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「四月大歌舞伎〈第三部〉」 4/27 歌舞伎座

〈ぢいさんばあさん〉

年末以来?の歌舞伎座へ行ってきました!始まる前に木挽町広場にいる段階から、やけに楽しくてニヤニヤしながらあれこれ見ていました(笑)歌舞伎座の外に出ると『本日千穐楽』の懸垂幕。見慣れた光景のはずなのに、全部新鮮で嬉しかったこの日の最初の演目はにざたま!!

衛生劇場で放送されたものを録画していたものの、いまだに見れていないこの演目。「未見なら初見が舞台のほうがいい」とのアドバイスをもらったので、そのとおり、何も頭にいれずに行ったこの日。

 

幕が上がると舞台上には玉さまの‘るん’と、その弟役、久右衛門の隼人さん。短気が故に喧嘩で負傷した義弟の代わりに一年京都に勤めをすることになった仁左衛門さんの伊織。

祝言から三年目で、子どもを産んだばかりという、若い年齢の‘るん’の玉さまは、声も今まで聴いてきた中で一番?といってもいいくらい高い声で、かといって不自然さは一切なく、高さをキープしながらも高いだけでなくて声の表情ももちろんあって、全身から若いるんの瑞々しさが溢れてたなぁと思います。

弟役の隼人さんのまっすぐで止まらない(止められない)ような感じもにじみ出ていて、見ていて凄く自然な姉弟

そこに帰ってきた仁左衛門さんの‘伊織’。にざさまも、もー‼️変幻自在、若いときの伊織もぴったりで。しゃん!と背筋の通った体の身軽さと在り方を示すような体の傾きかた。

るんと伊織が一緒の場面はお二人をとにかく見ていたくて、下嶋役の歌六さんのセリフの時も、目線はお二人でした。だけど!その歌六さんのセリフを聴いてるだけで憎々しい感じが物凄くよくわかる‼️これはもう凄すぎて、耳に入る表現のボリュームが圧倒的。実際見ながらの場面はさらに凄すぎたので、またあとで書きます(笑)

 

夫婦ふたりが仲があまりにも良いので弟が気まずくて出ていく場面(笑)。イチャイチャが「ひゃーっ!」ってなるところだけど、事前に予習していかなかったのでこういうところだけを期待して全体として見れなくなるということがなくてよかったなぁと思います。

イチャイチャなんだけど、それはあくまでも夫婦の仲の良さを表す場面で、このときにるんがたしなめる伊織の小さい頃からのクセ。これが話全体の中の大きいポイントなんだなぁと、後からわかります。

 

生まれたばかりの子どもを見に行き、あやす場面も、母親のるんに比べると伊織は不慣れな様子とか、人物像や距離感が、ひとつひとつの場面を丁寧に演じられているからこそ全体像として感じられるのではないかなぁなんて、思いました。

 

庭に植えた桜の木がこの年で植えてから三年目だったけど、この37年後に大きく花を咲かせるときと同じ木のおおきさというのがちょっとだけ気になったけど(笑)伊織がこの木に挨拶していくこと、心を向けることが、ただそれをしてるというんじゃなくて存在に重さや意味を与えてる感じがします。

 

 

伊織が京都に行ってからの場面。後から酔っぱらって入ってくる下嶋を、そして伊織や仲間達との感じを見ていると、どんなに悪態をつていても、伊織や仲間をさげすさんでも、ただたださみしい、根底にあるのはその気持ちだけなんだと感じました。

大人だから、表面的なことだけ見たら憎たらしい嫌なやつ、そういうことしかできない者にみえるけど、自分のもつ感情の裏返しなだけ。でも見てもらえるのは表面だけだから(伊織はそれだけではないことを気づいていたみたいだけど)むしろ望まない方へどんどん行ってしまい、伊織に斬られてしまう、それだけのことな気がしました。

刀を見せろと言われて伊織が下嶋に持ってきた場面、その瞬間に伊織を見上げる歌六さんの一瞬の表情に、なんともいえない思いとか感情プライド…いろんなものがつまっていて、なんて凄いんだと思いました。ほんとに、一瞬一瞬にそれが込められて表現されている、台詞だけでなく身体で表す表現がすべてあまりにも素晴らしくてとんでもない歌六さんを目の当たりにしました💦

 

さんざんばかにされてとうとう刀で下嶋を斬ってしまう伊織。原作を読んでいないし、なんとなく感じたことなので違うかもしれないけど、この伊織が下嶋に借金をしてまで欲しかった刀に惹かれたのも、本当は下嶋を斬りたくなかったけど、斬る羽目になってしまったのも、すべてこの刀ゆえに、だったのかなと。前の持ち主の念なのか因縁なのか、それはわからないけど、もうその流れすべてが伊織の意思がどうであれ動いてしまってる運命だったような感じがしました。

 

この場面の最初に、伊織が京の月に江戸の桜を散らす場面の美しさ。私は気づかなかったけど、この後下嶋を斬ってしまった場面で朧月になっていたそう。そして斬ったあとに雨が降りだし、伊織の心をそのまま写し出した背景の移り変わりでした。

 

時が流れて37年後。るんの弟の子、甥っ子役の橋之助さんと、その妻千之助さんは、亡き父が守ってきた伊織の家を守るべくここに住んでいたけれど、伊織とるんが戻ってくるので出ていくという場面。

父親がどれだけ伊織を慕い尊敬していたかということを再現する時、橋之助さんの心が伴っていて、父を通したその熱い気持ちがよく伝わってきました。橋之助さんと千之助さんの、若く初々しい夫婦という感じも出ていた…のですが💦ここからだいぶ辛口で書いてしまうので目にしたくない方は下の方の矢印まで飛ばしてください。

それまで出てこられて着ていた玉さまにざさま歌六さん…達のあとにお二人の声を聞くと、もうちょっと丸みがあったらなと💦音が刺さる感じに聞こえたのは、距離感なのか、なんなのか。

他に千之助さんの化粧が、もっと綺麗なお顔になるのではないか、とも思いました。この役はこのように、というのはあると思うんですけど、他の方たちを見ていてもそのかた自身がよりよく見えるようなお化粧をされてるはずが、そういった感じがしないというか。若くて初々しい夫婦なので、もうちょっと綺麗にみえるお化粧でもいいのではと。

橋之助さんが語っているときに、千之助さんが自分の動きに集中していて、せりふ聞いてないように感じたこともあり、実際はどうなのかはわからないけど、こういうところも意識の向けかた表しかたというのがあって、表現できる、またはにじみ出るものなのかもしれないとも思いました。

それがあるからか、心の動きに繋がりを感じられにくかったので、泣き出してしまう場面が唐突に感じられたり。やっぱりその瞬間どこに意識があったか、というのが現れるのかなぁと。

とはいえ、実年齢もまだお若い方たちなので、今後変化していくのだろうとは思いますが、もう千穐楽だったので、次回以降の舞台で期待してます😅

伊織が37年振りに帰ってきた場面。家の前を見上げて懐かしむ姿に、離れていた期間の月日が伊織に、この家にながれていたこと、それがあっての今だということを感じました。

その後戻ってきたるん。家の前で籠から降り、そこからゆっくり一歩ずつ歩いてくる場面。歳をとって、ゆっくり歩く姿そのものが、物語の一部として言葉ではなにも語ってないのに語られている、そんな感じがしました。そしてその分だけの年月が経ったことが感じられたことに驚きで。

その後、歳を重ねてきた伊織と一瞬顔を合わせるものの、お互いの変わった姿に他人だと思い込んで会釈して離れる二人。その後、伊織が昔から変わらない癖をしているところを見て気づく、るん。単に同じ癖だったから気づいたというより、あの頃と変わらない、あの人の癖、そこに懐かしさや当時の思い出も何もかも詰まっていて、それが一気に思い起こされたような、そんな感じがしました。

二人の歳をとった姿の表現がまたさすがで、インタビューで実年齢に近くなったとお話されていたけど、演じてらっしゃるのは昔のこの年齢像だと思うので、実際のお二人からしたらはるかに歳上の感じの役を演じてらっしゃる感じ。むしろ若い頃の夫婦にもまったく違和感はなく、昔演じられたときよりも、今のほうが、よりすべての年代を演じやすくなってるんのでは、と思うほどすべての年代がぴったりのお二人でした。

 

るんがやってくる前に隣り合う座布団を近づける伊織。伊織がいないときに座布団を見つけ、近すぎる座布団を離するん。近づきたい喜びと恥じらいと、夫婦の間でお互いに対する思いがにじみ出てて素敵な場面だなと思います。

 

そういえば二人の子どもは?と思っていたら、水疱で子を亡くしたことを謝らねばならないと話し出するん。伊織も自分がしたことにより長い月日を棒に振ってしまったことを詫び、お互いが抱えてきたことを許しあい、姿はかわっても変わらない二人で、余生ではなく、ここからまた一緒に生きていこうとする姿が、あまりにも純粋でまぶしくて、だけど若い頃とはちがって深さのあるふたりがとても素敵でした。

 

〈お祭り〉

松竹座などで拝見したときは、幕が開くと浅葱幕があり、それが振り落とされるとそこに玉さまがいらして始まってた気がするのですが、今回は浅葱幕無しで、(確か暗転のあと)最初から玉さまと若い者役の福之助さん歌之助さん登場。

こちらの演目、最初に観たときは神田祭の後、にざさまと一緒に踊られた後だったので、女の人ひとりで、ということに若干違和感を感じたものの(お二人の次はそうなったので)どんどん玉さまの格好よく素敵な芸者さんがしっくりきていて、この日は今までで一番それを感じました。

格好よくとも、指先まで柔らかくしなやかに踊るお姿に引き込まれ、後ろ姿もほんとに美しかった。

福之助さん歌之助さんは、凄く真面目に一生懸命取り組んでらっしゃる様子がにじみ出てました。一瞬よぎったのは松竹座での千次郎さん。お正月の華やかな獅子舞なともあったから?かもしれないけど、それでもくるくる変わる表情に明るさ軽快さがにじみ出ていて、舞台を盛り上げてくださる大切な要素をお持ちの方だったなぁと。福之助さん歌之助は少し表情がかたくて無表情に近いように感じたので💦役を演じて経験を重ねるごとに、柔らかく様々な表情をされるのかなぁ、なんて思いました。そして扇子をばっと広げたあと、最後は花道からの引っ込み。華やかでスッキリと、とても素敵な玉さまの去っていかれる様子に心に幸せな感じを抱えて、帰ってきた千穐楽でした。