やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「坂東玉三郎 特別舞踊公演〈口上・雪・鐘ヶ岬〉」7/28 南座

〈口上〉

七月の公演は玉さまおひとりの舞踊公演。口上では今まで舞台で使用された打掛も披露してくださるとのことで、行ってきました!

口上はいつ、何度聞いても、玉さまのキリッとしたお顔とお声が素敵。

この南座とのご縁のこと、仁左衛門さんとの共演や、先日亡くなられた秀太郎さんは一番親しくしていただいた、ということをお話されていたと思います。

番附に『今年三月に歌舞伎座で上演した折に美術家さんのともに作り上げた新たな舞台美術でご披露させていただきます』と玉さまのご挨拶の文章に掲載紙されているけれど、同じことを口上でもお話されてました。

その美術家さん、山中隆成さんという方が、この口上の時の金屏風、鐘ヶ岬の美術を担当されたそう。金屏風には季節の花が大きく描かれていて、華美すぎる感じではなく、見ると心がふわーっと明るくなるような、とても品のある、儚さもある絵に感じる。

 

「私事ではございますが…」とこの日の午前中に、翌月の公演「鶴亀」で使用する装束が出来上がって届いたとのこと。五日後に始まる公演💦実際に着てのお稽古もあるでしょうから本当にギリギリだったんだな、と。

どの演目をやるのか、半年以上前からわかっているのはなかなか難しいから、というようなことも仰っていて、実際に行われるかわからない公演、演目のために新しく衣装を製作してもらえるように、発注する側も、それを引き受けてこうして無事に届けてくださるという側も、どちらも本当に凄いことだな、と。

そんなリスクを追いたくなければ、既にある衣装、そういう演目を選ぶこともあるとおもうけど、そこも手を抜かない、という潔さ、その決断をするということ自体が、腹をくくっているというか、安全策に逃げないところが、やっぱり玉さまだな、と思う。

 

そしてこの次の月、8月公演にも、よろしければおいでください、ということを仰っていました。チケットが全然有るなぁ、ということは知っていたので、(そして公演を見終わって尚更思うことだけど)とてもとてもとても!もったいないな、と思う。

それぞれ色々事情はあれど、歌舞伎座でかかった時がそんなに遠くなかったとはいえ、素晴らしかったですもん。多くの方に見てほしかったなぁと思います。

 

そして打掛披露。番附にもこの打掛が載っているけれど、「政岡」の衣装。「阿古屋」「船辨慶」の前シテで使用の唐織は京都のものだそう。今回もこの衣装をお弟子さんの玉雪さんが後ろから玉さまに衣装をかけ、前から功一さんが直し、玉朗さんが衣装を舞台袖に持ち帰る、という流れだったと思います。

どの衣装の色も刺繍もその立体感も素晴らしかったけど、一番驚いたのが唐織。ほかの衣装は、袖を通し、玉さまが三方それぞれの観客にわかるように、美しくその衣装が見えるように披露してくださっていたけど、唐織は平面でみるときと、実際に着付けて立体的になったときの見え方、感じが全然違う。完成形だけを見ていては気づけなかったこと。着付けるお弟子さんたちも、さくさく進める様子が鮮やかで、見とれてしまった。

最後の挨拶の時、歌舞伎のことと、この南座が素晴らしい演目をする劇場であり続けられるように、と仰っていて、何年か前からご自身のことは仰らないのはわかっていたけれど、そこに寂しさを感じることよりも、本当にすべての発展を、それを見続けていただけるように、と思ってらっしゃることを、この方は本気で仰ってる、それがこの時物凄く伝わってきて、心の底からあつくなるというか、感激した口上でした。

 

番附を読んでいて思い出したこと−

初めて出演させていただいた顔見世の初日では、終演時間が延びて、午後十一時を過ぎたので、私が出ていた『京人形』」は上演できなかった(笑)。

↑書かれていたこのことについてお話されていたけど、今とは違って終電の時間などを考慮されていなかったので、こういうことも平気であったそう。

 

大役を次々に演じたのもこの南座だったとのこと。その経験がその後に(活かされた、とは仰っていないけれどそのようなことを)仰っていました。

今回の番附は玉さまへのインタビューが盛りだくさんでとても濃いので、あとで別記事んいしたいと思います。

 

〈雪〉

両脇の燭台の灯りのなかに、傘をさした真っ白い衣装の玉さまが表れ、身体から放たれるものから、ふわっーっと情景が浮かび上がる。心の様子が儚さと美しさと繊細に表現されていて、派手さはなくとも何度見ても心に残る演目で、その場で感じてるものはとても多いのに、感想が書けない💦

 

〈鐘ヶ岬〉

幕が上がり、驚いたのはその舞台上の光景!!大きな木に桜が描かれ、その前?の紗幕には風に乗って桜の花びらがひらひら舞ってきていると肌で感じられそうなほどなんともリアルに立体的に描かれていて、圧巻でした。

リアルといっても桜の花びらが実物みたいでとかそういったことではなく(笑)その中にいる空気を感じられそうなほど、絵に物凄い力がある。演奏の方の前に紗幕を使うことを逆手にとり、こんなにも素晴らしいものを作り出す玉三郎さん、美術の山中さん、関わる舞台関係者の方たちにこころから拍手をおくりたいほど、とてつもなく素晴らしい景色でした。

完全に目を奪われているので、目の前に玉さまがいらっしゃるのにしばらく全体の光景に見いっていたほど。こんな凄いものを作り出す人の手や感性って、なんて素晴らしいんだろうと思う。

そんな光景の中に現れた玉さま。鐘をみつめるとき、躍りのひとつひとつ、身体が現すすべてから感じられるものを、またなんと書いたらいいのやら😂

その世界に吸い込まれるような、そんな感じがします。

 

途中で引き抜きがあり、また玉雪さんの手が鮮やかで、少し余裕(時間の)があるのではというほど。

今回の舞台美術は圧倒的で、そのなかで舞い、創られる世界は、感嘆のため息をずっとしたくなるような←おかしな表現なんですけど(笑)本当にずっとそのことを思い出しその空気を感じていたい、素晴らしいもので、こういった一つ一つのものがどんな風にできているか、どんなものであるかが及ぼす影響は計り知れないなと思います。

また山中さんと舞台を創りあげていただきたい、と心から願っています。

 

〈カーテンコール〉

やはりカーテンコールもあり、三方礼、そして演奏の方々にも、とたくさん拍手をできて、気持ちを思い切り届けることができ、玉さまは最後ニコッとしてらして、その表情を見ることができてとても嬉しかったし、良い千穐楽でした。