やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「三月大歌舞伎」 3/29 歌舞伎座〈隅田川〉

隅田川、よかったなぁ…とぼーっと思い続け
日にちが開いてしまったら
さすがに記憶が薄れてきました💦
千穐楽の感想です。


笹の枝を持ち、花道から出てこられた
班女の前の玉さま。
被っていた傘を取っても、静かに哀しげで
ここまでの道のりをどのような想いで来たか、ということが想像できるような、そんな様子。

舟長の鴈治郎さん。
人買いが子供を連れてやってきたものの、
子供は倒れてしまう。
人買いは子供をすてていってしまい、
この土地の人が心配してお世話したものの、
死んでしまった、という話を
身振り手振りで班女の前に伝えるけれど、
それが引き込まれるような上手さで。
とても人情味に溢れていて、その様子からも
温かな気持ちを感じます。


話を聞いていくうちにどんどん身を乗り出し、
とうとうその子の名前を聞きだす班女の前。
その母の様子を見ていると、こちらにも
その気持ちがぐっと迫ってきて心が痛くなる。


班女の前が探している子供が、
その子だと知った舟長は、その子が眠る塚へ
案内し、そっと見守る。
舟長が墓に供えるように手渡した花も、
班女の前は墓前にもうすぐ着こうというときに
手からポロポロと落としてしまう。

この時の鴈治郎さんが、憐れむ気持ちが、
全身から溢れているのだけど、
特にその表情がどの場面を観ていても
本当に素晴らしくて。
花を渡すとき、手から花が落ちてしまった時、その前も後もずっと、人の心をこんなにも
表せる鴈治郎さんの舟長さんに、心打たれた。
本当に、情が濃い、という感じがあり、
そっと支えるような優しさもにじみ出ている。


玉さまの班女の前も本当に素晴らしかった。
以前演じた同じ演目を映像で見ていたものの、
その時よりも感情をあらわにしていて、
それがまた心に響いてしかたなかった。
呆然とし泣き崩れ、我が子の幻を見てしまう、
母の気持ち。
それを、見守る舟長の鴈治郎さん。
二人を見ているとお互いの気持ちから、
この哀しみ、優しさ、人を想う気持ちが痛い程
伝わり、心が震えて、涙が止まらなかった。


今の玉さまの班女の前に、鴈治郎さんの舟長で
本当に素晴らしい配役で観ることができて
良かったと、心から思います。