やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「三月大歌舞伎」 3/28 歌舞伎座〈雪・鐘ヶ岬〉

〈雪〉

広い歌舞伎座だから、舞台上の玉さまを
遠く感じてしまうんだろうか、と思っていたら
とんでもなかったです。
たぶん、奥行きをそんなに使わず、
客席に近いところを定位置にしていたからか?
細かなところまで拝見することができました。

全体の照明を落としたところに、上手と下手に
ふんわりとともる灯り。
暖かさだけでなく、芸妓さんの心が
表れているようにも感じられて、
場面によって、同じものでも見え方が
変わってくるものだな、と思います。

傘を拾う時、下を向かないように体勢を
保ちつつ、ひざを物凄く低くしたり、
足を引いて(開いて)保ったり。
〈雪〉は、身体と衣装すべてで、美しい線が
描かれているのがよくわかる。
ゆっくりだからこそ、その分体勢を
キープする時間が長いし、
次の体勢に移るまでも本当になめらかで、
その身体の使い方、使う力?は相当なものだ
ということが衣装越しにも想像がつく。
見た目の優雅さとは裏腹なんだなぁと、
つくづく思います。

〈雪〉〈鐘ヶ岬〉の玉さまはなんてお若く
美しいのか…。
玉さまには当たり前すぎることだけども
あえて書きたくなる位で。
この時の鬘、お化粧は特にそう感じます。
もちろん外側や身につけるものだけでなく、
玉さまの心がその役であり、
その心情が滲み出て、表されるものからも
きっと感じているんだと思う。


ゆっくりだからこそ一つ一つが結晶のような
美しさをじっくり観ることができて、
見終えたときに、なにかが大きく残っている
感じがしているんだろうな、と思う。


ほかの舞踊でも同じような情景のものは
あるけれど、やっぱりそれぞれ違って、
〈雪〉も、何度観ても心奪われる演目でした。


〈鐘ヶ岬〉


〈雪〉とは対照的に、歌舞伎座の広い舞台
だからこそできる大道具で、
全く別の味わい方ができる二題なんだなぁと
思います。

大きな鐘がつるされ、背景には大きな桜の木。
玉さまが今月のコメントでも書かれていた様に
演奏家の方達は紗幕の後ろに。
その紗幕にも桜が描かれていて、それにより
桜の木がとても立体的。
これが本当に素敵で、こういった状況から
生まれた新しい良さだと思うし、
こうしたことをどんどん取り入れていかれる
のが素晴らしいなとつくづく思います。


鐘ヶ岬は、正直濃密すぎてある程度観て、
感じきったら次を観たい、て思うほど(笑)
だから、あっというまに過ぎていってしまい
観きれてない気がする💦
今回は一度だけでしたが、もう一度
観たかったなぁと思います。
この演目では鐘を睨む時、思い切りあらわに
している、ということではないけれど、
だからこそじっくり観たい。
見とれてぼーっとして次が入ってこないので(笑)
また見れますように。


引抜のとき、玉雪さんの凄さがよくわかる。
決して時間に余裕があるわけではないのに、
その間にあっちの糸を引き、次にこっちを、
と忙しい。でも、雑に見えるわけでもなく
坦々と、無駄な動きもなく、
玉さまとタイミングを合わせてらっしゃる。

もし自分が玉雪さんだったら、という無謀な
想像をしてみたんですが(笑)
あの時間内ギリギリに、あれだけのことを
狂いなくやる、というのは慣れていたとしても
プレッシャー💦
すべては玉雪さんにかかってるんですもんね。
玉さまもそこばかりは委ねるしかない。
信頼があるのはきっと当たり前で、その上で
何があってもこの人に任せる、ということ
なんだろうなぁ。
本当に凄いことをされてます。


息を止めてしまう位の勢いで玉雪さんをじっと
見ていて、気づいたらもう最後の部分。
緩やかに、するーっと上の衣装を抜き、
変わる玉さまの衣装。
黒から白へ、この色の変化が、ここでまた
パッと目が覚めるように鮮やかに写り、
引抜って本当に魅力的だなぁと、何度観ても
思います。

はらはらと舞い落ちる儚さと、
降り注いで一面をその光景にする、
桜の圧倒的な面。
それらがあまりにも玉さま清姫にぴったりで、
引き込まれてしまうほど美しかった。
またじっくり観たいです。


帰り際、通りがかりに拾った鐘ヶ岬の桜吹雪。
四角じゃなくてちゃんと桜の花びらの形でした🌸
f:id:yko888:20210405094939j:plain