やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「坂東玉三郎 下関特別公演」6/28 下関市民会館 ②

**<由縁の月>

DVDと同じように赤地に白のお着物に黒い打掛の衣装。
舞台が大きいのでろうそくではなく、和紙で上に広がったような形の、和紙のようなもので形づくられたものが両脇に置かれてる。後ろに舞台を覆うほどの屏風、上手に富山清琴さんと清仁さん。舞台が広いから、玉さま、舞台中央の方を若干向きつつも、客席側を向いたような位置にいらっしゃって音と唄がダイレクトにこちらに響くようなかたち。

玉さま、DVDでもそうなんだけど、松山太夫のように帯を前で大きく結んだ形で、でもDVDより大きい!!(もしかしたら鉤簾の戸だったかも)それこそ松山太夫のようなああいう帯の形。踊るのには大きいのかもしれないけど、その大きさと斜めにこうふっくらなっている帯の形がたまらんのですよ・・・。
衣装の細かなそれらすべてが、玉さま全体のフォルムとなって、それが感じられるものにも大きく影響しているような気がして。それに後ろが!後ろが!!!!客席に背を向けたときに見えるうなじのあたりがDVDよりはるかに大きく開いていて「ひゃぁぁぁぁ!!」ってなってしまう(笑)物凄くものすごーーーーく艶やかで。で、背を向けたときに見えるそのうなじと打掛の真ん中の月、お姿そのものが素敵で、見惚れる。あまりにそのお姿が美しすぎてその印象が一番強い💦
懐紙をもってゆったりと踊られるときのその角度や、身に纏うすべてと玉さまからあふれる風格と、鬘の後れ毛一つ、何とも言えないその表情にも昔を想う切なさが溢れていて素敵だった。

**<鉤簾の戸>

お座りになった姿で、団扇で顔を隠しての始まり。
座り姿勢から立ち姿勢、立ち姿勢から座り姿勢への躍りが多いこの曲だけど、玉さまはどの体勢でも姿勢でもだけど、特にお座りになったときの艶やかさが凄い…。最後に二人で蚊帳のなか、なんだけど、客席が皆引き込まれてるのがわかる…もう一回観たいなぁ。あの世界に入りたい。

**<鐘ヶ岬>

幕が上がると大きな鐘がある!
そうだった、能楽堂ではそういった舞台装置がない中での舞だったから、濃密な空間で無い鐘を感じてた。
実際に鐘がある、そのときに初めて「この劇場の大きさ」に気づいた。この広いホールに舞台上のすべてを合わせてること、玉さまの意識の広がり、どこまで行き届かせているか、拡大させているかということ。
ただ、パッと来て公演が出来るわけではないんだ。その劇場を知りその場に合わせたものを用意し、それに合わせた意識の使い方、在り方をする。当たり前なんだけど、毎回そうして公演してくださっている。それだけいろんなところに巡らせている。
それだけのことをしてくださっているから、毎回心地よく夢中にその舞台を観られる。それに合わせて踊る、演じる。その自在の変化を観ることの凄さを改めて感じた。

そして引抜。今回は熱海のように横から見ることはできないし、しかも少し遠かったけど、目で見えなくとも今黒い糸を何本も抜いて…とまったく手が止まる暇もないことをわかってはいるので、それを思い出しつつ目の前の舞台でのことと重ね合わせながらみせていただいた。
やっぱり凄い技だしそこに美しさも表せる玉さまと玉雪さんに圧倒された。

舞台の大きさが変わった、といえばはらはら落ちる桜吹雪もあった!!こういうことができるのはまたこういう大きなホールの良さでもある、と思った。
視覚的にその世界を作り出せること、それもこの公演の良さだった。


** <カーテンコール>

鐘ヶ岬が終わると客席から大きな拍手。幕が上がり中央にお辞儀をされた玉さま。お座りになった状態で上手、下手にご挨拶され、中央へ、そして幕がおりる。
それでも拍手は終わらず再度幕が上がる。今度は富山清琴さん清仁さんへの感謝の手をかざされると、さらにさらに大きい拍手。自然と感情のこもるその拍手が、しっかりとお二人へも届いてると思う。
カーテンコールの玉さまの、目がふぁっと変わる瞬間があって、そういうときに今つうじあってること
、拍手にこめた気持ちが伝わってるはず、と感じる。この瞬間に立ち会えることが嬉しい。