やっぱりLiveが好き

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「坂東玉三郎写真展」THE GINZA SPACE 1/28,2/7

玉さまのお写真をよく撮ってらっしゃる岡本隆史さんの写真展。本当にひとつのフロア、フロアというか天井が高く、壁がカーブを描いている筒状のひとつの部屋。その真っ白い壁面に展示されてた。

入って正面に、今回のリーフレットにも使われている「雪」の大きな大きなお写真があり、そこのみ撮影OKスペース。入口から時計回りに、まずフランスのモネの池、橋の上で、目の前に広がる池を見て佇むお着物姿の玉さま。その隣にモネの池の全景写真。この全景写真が、パノラマ状に恐らく全体が写っていて、玉さまがどこかに映ってらっしゃるのかと思って探すんだけど全然見つからない(笑)!!ほんとにウォーリーを探せ状態(笑)でもよーくよーく見ると左端の方に、最初のお写真と同じ橋の上に佇む玉さまが遠目に映っていらっしゃる!これはちょっと面白かった(笑)

この全景写真があることで、玉さまはこの風景をご覧になって、佇んでいらっしゃるのがこのお写真なんだなとわかって、同じ景色を見られることが嬉しかった。

その隣が、昔和樂の別冊に載っていた楽屋の化粧前で紅をさす玉さまのお写真。その前に、玉さまが実際にお使いになっているという6週間の集中美容トリートメント昼夜二本組のサンプルがオブジェのように置いてあって、玉さまはこのシリーズのエンパワライザーというクリームをお使いになってて、その菩提樹の香りがお好き、ということを以前の和樂で読んでいたので、つけてみたら、辛くはないけど甘くもない、元々の菩提樹の香りってどんなものかわからないけど、あまりに人工というのでもない(サンプル試したら気持ち人工ぽい💦)化粧品ぽい香りでもあるけど独特な香りだった。展示スペースを見終えた後に、上のコスメ販売フロアでクリームも試させてもらったけど、美容液とも同じ香りでした。

紅をさす玉さまの写真の隣に、阿古屋、道成寺の花子。この花子の玉さまのお写真が、手拭を上から前の方に投げるような(実際は投げてない)仕草の時の一瞬で、おそらく他の写真でもそういう一瞬はあると思うんだけど、この一枚は手拭いの描く弓のような丸さと玉さま自身からその時の感情がにじみ出ているもので、こんな瞬間を映せることが凄いと思う。

その隣の藤娘。しおらしくなっている一瞬なんだけど、こういうお写真もどこかで必ず撮られているはずなのに、今までに見たことのないお写真だった。しおらしいというだけではなく、恥じらいも可愛さも、藤娘のその背景やすべてが感じられて、この一枚も素晴らしかった。

そしてその隣「雪」三部作。「雪」を語るのはお写真でも難しいんだけど、玉さまの表情、身体からの表情、その角度、身に付けているもの、お着物の重なり・・・それらすべてから感情が感じられる。それが三つの連作となると、圧倒される。静かな作品の中に感じるそれらってその時のその人物の感情だと思うんだけど、それほどまでに表せる玉さまの凄さ、それを切り取ることの出来る岡本さんの凄さがわかるようだった。

その隣が入り口入って正面にあたる特大パネルの「雪」の玉さま。

その隣が鷺娘の連作。出の時の傘をさして顔を下にして見えない状態の時。その隣に最後の火責めの時のお写真二つ。この落差で鷺娘すべて語れちゃう。凄い。

その隣に籠釣瓶の八ツ橋。花道から鳥屋に向かう八ツ橋を、鳥屋側から写したお写真。この写真が好きだった。八ッ橋の見つめる先に八ッ橋の思いが感じられて、ぼんやりというんでもないんだけど、抑えている表情の中にも凛とした気高さと強さ、そのなかに儚さも感じられて役の思い、背景が感じられるものだった。

その隣が夕霧。楽屋で顔する玉さま。パノラマのゴッホの麦畑の真ん中に佇む玉さま。ヴェネツィアで舟に乗っている夕刻時時の玉さま。

展示室の上部は舞台上の時のお写真ではなく、それぞれのお役のスチール写真というのか、そのお写真がずらっと並んでる。お軽、楊貴妃道成寺、傾城、二人椀久の松山、藤娘、神田祭

このお役の写真を見ていると、玉さまご自身はもちろんのこと、身に纏うものの繊細な角度、状態それらすべてがその表現なんだとわかる。同じ役でも同じように映ってはいないし、その時のその役を表している。表現者としての玉さま、役の感情がにじみ出るということがいかに大切かということ、またそれを切り取る感性のある岡本さん、このお二人の凄さを存分に感じられた写真展だった。

いつもなんらかで拝見しているお写真とは大きさもちがって、その一枚のお写真に向き合って見る、という感じだった。これだけじっくりと、そのように拝見できることはなかったし、お写真から、これだけその役を、感情を感じられるものなんだなぁと、あらためてわかった。

最初に行ったときに、アジア圏の方が見に来られていて、どういうつもりでかはわからないが(笑)「How much?」てスタッフの人に聞いていて、スタッフの人は売れません、て答えていたけれど、その外国人のかたが置かれている芳名帳に、ものすごく長く熱いメッセージらしきものを書いていった。玉さまの美しさって、国関係なくひとの心を動かすんだよな、ということを目の前で感じて、これもまた特別な体験ができた日でした。

玉さまが、岡本さんのこと、岡本さんのお写真をどう感じてらっしゃるのか、岡本さんは玉さまにかんじること、またどのようなご自身の状態でお写真をとってらっしゃるのか、双方のお話を聞いてみたいと思うし、また対談も実現してくれたらいいなぁ、と思う。