やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「幽玄」その後 9.26

歌舞伎座のいつもの公演のときは、たいてい幕が閉まったら拍手は止んで、皆帰りだすけど、でも26日の千穐楽、幽玄が終わり、客席から拍手が起こり、幕が閉じても、全然鳴りやまない。中にはいつものように帰る人もいるけど、他の人達からはずっとずっと、凄く熱い拍手が続いて、この光景が観られて、その場所に居て、体験できて、本当に本当に幸せだった。

今回の幽玄は、歌舞伎好き・・・といっても色々だと思うけど(笑)、自称そういう人たちの一部には受け入れられない、歌舞伎じゃない、みたいな声が結構あったらしい。だけど、舞台を観て感じた人の反応は、こうだった。まるで、拍手に応えて再び幕が開き、役者さんたちが出てきてくれるのではないか、というカーテンコールの雰囲気。実際は再び出てきてくれることを期待しての拍手ではなく、拍手せずにはいられない、心の底から湧き上がってくるその思いをこめて盛大に拍手していた。そんなことが、通常カーテンコールのない歌舞伎座で起こってる。だれかの一世一代でもないし、新作歌舞伎、まして歌舞伎好きの人があれこれ言ってたこの公演で、受け入れられ、人の心に届き、その反応が、玉さまや役者さん達、鼓童のメンバー、スタッフさん達に届けと言わんばかりに拍手し続けるこの形になって返ってきた。

それを見て、物凄く嬉しかった。きっとあれこれ言われることもとっくに覚悟のうえで玉さまは今回の幽玄を作られたのだと思う。どんな声が届いたとしても、「もっと良くなるには」それを日々考えて手を加え、最善を更新し続け、舞台を作り続け、演じ続ける玉さまの信念と強さと行動力に頭が下がる思いでいっぱいです。 

場内のアナウンスで終了を告げても鳴りやまない。そのうち劇場スタッフの人達が客席に終了の声掛けをして、私達もようやく拍手をし続けることを終えた。枠にとらわれず目一杯の手を尽くし、人の心を揺さぶるような舞台を作るということ、そうしてできたものは、人の心に届いて、こうして返ってくる。このことを物凄く、物凄く感じた。

 

カーテンコールのような拍手もとてもとても嬉しかったけど、この日お隣に座っていた方とお話しできたこと、そこでわかったことも凄く凄く嬉しかった。私の席がどセンターなうえに前の列の方が頭をかなり動かす方で正直とても見づらかった(笑)それを察してくださった隣の方が「自分は6回観ているから席をかわりましょうか?」とわざわざ言って下さって、私も幽玄となったら視界が開けるところを探して絶対に舞台を観る!!と決めていたので有り難かったけど大丈夫です、とお断りした。6回?6回って!!と思ってそこから少しずつお話させていただいたんだけど、もともと歌舞伎がお好きな方だそうで、この夜の部は一回分しかチケットを取っていなかったけど、初めて見たときに玉さま×鼓童にしびれて今日もチケットがたまたま出ている場所を見つけ、取って来たそうで。今回初めて見たこの方は相当な衝撃を受けたらしく、鼓童の曲もダウンロードしたとのこと。この方自身が昔ドラムをたたいていたそうで、ドラムと太鼓は違うけど響く部分が多かったらしい。だから、6回見てきた中で、確か羽衣の太鼓の音の出し方、前は長音で売っていたけれど、短音(?)に変わったところがある、とか色々変更されてる部分が多いということも教えていただいた。太鼓のその細かい部分は私はわからなかったけど、やっぱりドラムをされていたからそういうことが敏感にわかるのかなぁ。とにかく、他にも私が気になっていた、道成寺の花子さんの鞨鼓の叩き方が変わったと感じていた部分もそうだし、それどころか玉さまは同じように打っている時がない、要は日ごと変えている、というようなことも仰っていたし、羽衣の袂を頭の上に乗せるところも、花道と舞台で二回されてたけど、今日は花道でだけだった、とか、とにかくいろんな細かい違いに気づいていて、それを聞いていて驚いた。

受け入れることが難しい人もいたこの舞台に、ドーンと射抜かれて、6回も通って下さっている歌舞伎好きの方がいらっしゃる、それがとてもとても嬉しかった。ユーミンや梅川さんが絶賛されていたことを知った時も嬉しかったけど、歌舞伎好きの方の中にこのように感じてくださる方がいらっしゃることを知ることが出来て、直にそのお声を聴くことが出来たこと、ちゃんと届いて通じている、そうわかってほっとした。心に響くものは人の心に必ず届く、そういったことを、カーテンコールやこのお隣の方から教えられた、伝えてくださった感じがして、こんな体験をさせてもらえて夢みたいで本当に有難かった。自分の好きなもの、感じたことを、他人が例えどう言おうが曲げずに、私のものとして大切にする、それを信じて貫いていいし、大事にしていいんだ、ということを、改めて、力強く感じた千穐楽でした。