やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「十月大歌舞伎」 10/21 歌舞伎座〈映像×舞踊公演 口上・楊貴妃〉

〈口上〉


玄宗楊貴妃」は約二ヶ月の公演で、このときに『仁左衛門兄さん』と中国へ行き、学んできたとのこと。
なんといっても『兄さん』呼び!!!が聞けて最高でしたわ…

玄宗楊貴妃」の中では、もう亡くなってしまった楊貴妃と会うことは現実には叶わないけど、夢の中で玄宗楊貴妃が踊る、という場面が最後にあったそう。その部分を後に夢枕獏さんが「楊貴妃」として書いてくださったとのこと。
玄宗楊貴妃の七月七日のことも仰ってたけど、また忘れている💧

玉さまのお養父様、お義祖父様は、北京京劇団の方と親しく、梅蘭芳さんのことはよく聞いていたそう。玉さまに実際に躍りを教えてくださったのは梅葆玖さんで、手取り足取り教えてくださったとのこと。
程硯秋(ていけんしゅう)さんも、身長180センチあった長身の美しい女方さんで、写真で(調べて)見てみてください、と仰ってた。

以前も「長身の京劇女方俳優さん」のことを玉さまがお話されていたけど、ようやく今回お名前を把握!お写真見ました。お顔が小さくて背が高いのがわかる…このかたの逸話も結構書いてあって、乗り越えてきたこととか、かなり興味深い方でした。

前回よりも、梅蘭芳さんや京劇の女方さん等のお話をたくさんしてくださって、玉さまにたくさんの思い出がおありになるのだろうなぁということが凄く感じることの出来た日でした。
途中で( ゚д゚)ハッ!として「つまらない話を長々としてしまい」と仰ってたけど、玉さまが夢中になってお話されることがつまらないわけないのだ!
玉さまが過ごされたその時代を共有できたような時間でした。

舞台からの客席風景を見せてくださるときのこと。
今まではわりと正面に近いところから見ていたからわからなかったけれど、外花道側のこの日は、斜め横から見ることができたので、下手、正面、上手、の下手を表す斜め部分がよく見えたのだけど、提灯が立体的に見えてたのでてっきり実際の提灯かそのように見えるものを半分はめこんでるのかと思ったら、たいら!立体に見える絵!!そこに照明がはいる(?あれすらも絵なんだろうか…)ことであんなにも本物の作りのように見えるとは…舞台を作る職人さんたちは凄い。


楽屋にある鏡台に座ったときに背後の方、左にある錦絵の版画。豊国のもので、芝翫歌六、あともう一人が描かれてる。このときの歌六さんは女方さん。
鏡台の向こう側にも、背後の右側にも屏風がある。紹介はとくにないけど、全部であの楽屋の雰囲気になっているのだと思う。

鏡台は「桑」から出来ているそうで、どんな風に木目がでるかということを職人さんは考えて作ったのでは、とのこと。
筆入れも、桑。引き出しには、頬紅ブラシ、紅などの色、リップ、あと大きなハサミがはいっていたけれど、あれは何に使うのか。

楊貴妃

過去の舞台のときには中車さんの方士が玉さま楊貴妃から扇子を受けとる場面。
そのときにはスクリーンが下がり、スクリーン後ろの玉さまは透けるように見えていて、舞台にご自身の右半身を見せる状態での立ち位置。
映像より早めに扇子を閉じて、客席にはわかりにくい腰あたりの位置で左側にいらっしゃる玉雪さんに扇子を渡す。
その後に翡翠のかんざしを渡すときも、さりげなく左手に持ったかんざしを左手にいらっしゃる玉雪さんへ渡す。美しく見せるって凄いな!!って思いながら凝視してました(笑)


最後の方、楊貴妃が袖を長くするところで、右腕の一部の糸が外れていない=袖が長くなりきらない、ということがおこり、これがなかなかしぶとく切れなかったようで、躍りの途中で、「楊貴妃のまま糸を切る」という時間があった。
完全に糸切りに没頭してしまう感じでもなく、かといって簡単には切れないから、半分くらいは切るために集中というか。
なんていうか、躍りの流れはきらないけれどしっかり切ろうとしないと切れない時間というのが少し続いたんです。
時間にしたら一分はかかっていないかもしれないけど、見てるほうからしてら「なかなか切れないんだなぁ」と思うほどの時間の長さというか。

以前「僕らの時代」の中でだったと思うけど、すべてが完璧にうまく行くときなんてない、何かしら毎日ある、というようなことを仰ってたと思う。

この時間もその一部にすぎないけど、起こったことよりも、演じている方としては、起こったことに対してどのようにリカバーするのか、自分がどのように在るか、ということは凄く重要だな、と思ったし、だいぶ時間もたって躍りもポンと飛んだところから始めるのに、難なく繋げてらっしゃるように見えたことや、こちらが落ち着いて見れているということがいかに凄いことかと思った。

長年舞台に立ってらっしゃる、何度も何十年も踊ってらっしゃるからといって、トラブル時の在り方というのはあんなにスムーズにいかせられるものとは限らないよなぁ…どんな風な感情がわいて、どのように玉さまのなかでは思考して決めて行動、どういう意識状態であるのか、と思う。

そういったことを知りたくなるくらい、楊貴妃のまま、流れる時間を止めずにしてらしたことが凄いと感じた。

〈カーテンコール〉

二回目のカテコ。上手へ、そして下手へと来てくださったんだけど、今回少しお客さんが少なかったのか、外花道側にいらしたのは二人。玉さまは外花道側へはそのお二人をピンポイントに見てお辞儀をされてた。
で、そのうちのお二人は私が前回来たときにいらした外国人の方に似ているような気がして、しかも席も同じようなところ。
もしかしたら通われていたり、前回観劇されたことからまた観たい、ということで来られたのかもしれないし…と想像したところでわからないし別人の方かもしれないけど、同じ方ならなおさら玉さまも嬉しいお気持ちだろうなぁと思いながら、その様子を見てました。

花道で、手の指を組んで山のような形でごあいさつをしてくださり、そして舞台中央に戻られると、今度は袖から手を完全にだして(花道のときには袖で少し隠れてた)、指を同じ形に組んでお辞儀を。
最後は両手を広げて、腰を下げ、楊貴妃らしいポーズで幕が下がりました。