やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「十月大歌舞伎」 10/26 歌舞伎座〈映像×舞踊公演 口上・楊貴妃〉

〈口上〉

明日で千穐楽であるので、まだ終わっていないけれどほっとするというようなことや、
色々お話しされたとあと「湿っぽくなってしまいましたが(笑)」と仰ったときの
ニコッとした笑顔が素敵でかわゆかったです(笑)

「一人の口上で、通常の口上の状態は面映ゆうございますので、先月は歌舞伎座の前で、
今月は変えたいと思い金屏風の前で皆様をお迎えすることにしました」とのこと。

その後の、「好評により」先月に引き続き舞台から客席がどのように見えるかを再現する場面を見せてくださる時のこと。
一体どこの声が届いているのかわからないけど、そういう反応が間違いなく届いていて、
それを反映してくださってるんだなということを今回も感じて、
前から同じこと仰って下さっているにも関わらず、本当にそうなんだってことをまた実感しました💦


楊貴妃のお話。
玄宗楊貴妃」その最後をもとに夢枕獏さんに新たに書いてもらい、また、曲も新しく作っていただいた、というお話。
あんなにも素晴らしい曲だから耳に残るんだなというのも今回改めてわかった気がします。
玉さまの仰る一言一言が、ただ単に事実を並べてるんじゃなくて例えば
作家、作曲家さんのお名前を出されること、そこにお気持ちがあるからなんだろうな、と感じます。

「七月七日の七夕の日に、玄宗と永遠の愛を誓った楊貴妃が、
『天にあっては比翼の鳥となり、地にあっては連理の枝とならん』と
皇帝から翡翠のかんざしを贈られ、このかんざしを持っていけば私と会ったことがわかるでしょう、
と方士に預けた」
…そのことを玉さまがお話ししてくださる時、玉さまの朗読を聴いているみたいな感覚でとても心地いいんです。


歩き方、目の使い方、みず袖の使い方、など梅葆玖さんから習ったこともお話しされてました。


楊貴妃」を上海など三都市(中国?)で公演したとき、崑劇団の人たちが奏でる音から、
シルクロードの風が吹いたのは不思議で、中国の南なのにインドやシルクロードを感じるのは何故か、それを楽団の人に聞いたそう。

このことは21の日にも、それ以前の中盤辺りからもお話されていたようで、友人の話しでは

「中国の蘇州で楊貴妃踊った時、蘇州の京劇の楽団に向こうバージョン?(たぶん)
で演奏してもらった時、(日本だと漆塗りの壁に囲まれてるような古風でしっとりみたいな
日本古来の感じがするけど)
踊ってる時、インドやシルクロードを辿って旅した時のような風がふっと吹いて、
京劇の人に、『どうしてインドや向こうの風が吹くのかしら』と聞いたら
京劇で使ってる楽器は大昔の蘇州の資産家たちがシルクロードを通って
向こうから運んできた楽器をうちで演奏させて、そういうことで成り立ってきた楽器や音楽だから、
そういう歴史があるからじゃないか」と言われたとのこと。
そのようにしてやってきた楽器にたいして、ひとつひとつのことに玉さまは思いを巡らせてらっしゃるんだなぁと思ったし、
「日本にやってくるときにはそぎおとされてまた違ったものになった」(←もう少し違う言葉で仰ってたと思います💦)ともお話されてました。

玉さまや、(たぶん)崑劇の方達も、そのようなことを実際感じながら、演じて演奏してらっしゃることがただただ凄いと思いました。

このお話のあとだったか、口上の最後か、明日で千穐楽なので、募る思いが込み上げてくるのか、
玉さまがご自分で「たくさん、お話ししてしまう」というようなことを仰ってて、
楊貴妃や中国での全てに深い思い入れがおありなんだなぁと感じた今回の口上でのお話しでした。


奈落の紹介に入る前に海外でのバックステージツアーのお話。
玉さまご自身がロンドン(?)、ラスベガス、ニューヨーク、へ職業を隠して
いろんな都市で見てきたこと、そこで感じる新鮮さが嬉しかったのだそう。
衣装に触れようとしたりその場所をもっと見ようとするときに
ストップをかける案内人の動きをするために、ご自身の前に置いてある扇子を手に取る。
先月と同じだけど流れるようになっていて、この2ヶ月皆にわかりやすいようにずっとお話してきてくださったんだんだなぁとしみじみ。

「奈落といってもこの世の奈落ではございません」も同様。聞くと落ち着きます(笑)

「立女形となり次々に大役を演じさせていただき、身に余る光栄~」という話から
「皆様にこうしてきていただくからこそ」ということ、そして「今後も精進して参りますので~」
というところでこの話は終わるのかな、と思いきや
「なんか、暗い話しになってしまい…なんか、」と、
玉さまは普段「なんか」という言葉をこんな風にお話しされるのかな、と思うくらい
自然に出てきた言葉にきこえて、玉さまが「なんか、なんか」って仰ってる!って反応していたのでした(笑)

奈落の映像も、先月とは同じでないように、少し頑張ったんです
↑「頑張った」という言葉は使ってないかも、でもそんな感じのことを仰ってましたし、その通り変化を感じました!

もう次の松山太夫になるというその直前に、半分立ち姿勢で「ねえねぇ、ちょっと聞いて」
みたいな感じでお話しされてたので、玉さまがそんな前のめり風に話して下さってる!!と身を乗り出すような気持ちで見てました(笑)


映像部分。

阿古屋を演じ下がってこられた時に、玉雪さんがすでにスタンバイされておられるのだけど、
玉さまが一瞬無言で玉雪さんの方をチラッと見るとそれが合図なのか、玉雪さんが片付けに入る。
こういう言葉にしない合図、アイコンタクトをされていて、普段の光景を垣間見れた感じ。

楽屋の鏡台を説明されていたときに、鏡台の左には、おしぼりとティッシュ?紙のようなもの。右にはきれいなお盆のようなもの。
お粉などを入れている物の説明のときに、その器の一つ上のスペースにはウサギ柄の入れ物!がある。
鏡台の下、足を入れるスペースのようなところには、黄色い六角形の敷物とか鍋敷き?
熱いものを置いたりするような…そういう大きさのものがあり、赤や他の色で丸い柄、
刺繍みたいなものがついていて、楽屋の雰囲気とは少し違って可愛らしいそれは、
はて一体何にお使いになるのだろう、と凄く気になる謎の物でした(笑)


楊貴妃

カーテンコール
一度目に気づいたのは、袖を短くされてる!ってこと‼️長くしていた袖を畳んで
元の状態になったあとに幕が上がる(のか、上がるまでの間に袖を直してらっしゃるのか)
舞台中央で、お辞儀をされて幕が下りる。

二回目。この時も袖は短いまま。舞台中央から上方まで見られて、上手へ。
上方までみてのお辞儀。そして下手へ。下手へ行くまでも客席を見ながら移動され、花道へ。
外花道側を、前を起点にうしろまで見てお辞儀。上方を見るとひときわ大きな拍手。
花道内側をみて、最後に舞台へもどるときにもういちど外花道側前方を一度見て会釈されてから移動。
舞台中央へ、もどられ終了。

いつもはここで終わってました。が!!私の一列前の方、とくにセンターのお一人の方が
熱烈な拍手をずっと続けておられて、全体の拍手が消えそうだったんだけどそのお隣の方や
私や他の方も拍手を続けると全体の拍手に繋がり、三回目の幕があがった!!
舞台上に玉さまはいらっしゃらず、下手舞台袖の前方からご登場。

玉さまが花道へ向かいます。ここで初めて袖が下ろされた!!
舞台へお戻りになる時、長くした袖を反対側の肩にかけて、中央に戻る時にサッと下ろし、
今回は上手へは行かず舞台中央で、両腕を横に広げ、足を一番低い姿勢までさげ、
お辞儀をされて幕がおりました。

誰かの為ではないけれど、あの熱烈な拍手をしていた方がいらっしゃらなければ、
三回目のカーテンコールは成立しなかったのは明らかで、とても有り難くて。
帰りにその方が私のうしろを歩いてらしたので、本当はあんまり話すのとかNGな時期だけど、
チャンスは今しかないと思い、そのことのお礼だけお伝えしたら、
その方は今日は二度目の観劇だったそうで今回本当に素晴らしかったので拍手をされていたそう。
周りを過剰に気にしたりするのでなく、打算的でない、気持ちを自然に行動に出すことの素直さを
この方の姿から教わった気がして、気持ちが洗われたようでした。