やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「十月大歌舞伎」 10/27 歌舞伎座〈映像×舞踊公演 口上・楊貴妃〉

〈口上〉

先月、今月と2ヶ月公演を続け、無事に千穐楽が迎えられたことへの感謝について、仰っていました。

この日に初めて聞いたのが、「舞台にでていないときが仮で、こうして舞台に出させていただいているときが本当の姿なんじゃないかと思う」というお話。
他人がああだこうだ言うことより、ご本人がそのようにお感じになってらっしゃるこの一言が、なんだかとても刺さりました。
嬉しい、とかいうより、深く理解する、みたいな。「あぁ、そうなんだなぁ」って。わかりにくいですが💦


楊貴妃の話。

この前の部、三部の石切の仁左衛門さんと(こんな簡単な言い方ではなかったと思うけど、前の部に出演されてる仁左衛門さんという言い方は初めて聞いたなぁ、というメモです(笑))「玄宗楊貴妃」で一緒に出演だったこと。

皇帝から手紙を託された方士が楊貴妃を訪ねるが、夢の中なので皇帝も一緒に踊る、という「玄宗楊貴妃」の一場面をもとに膨らませて独立させた「楊貴妃」。

作曲をしていただいた、唯是震一さんとは、二十歳代の頃からのお付き合いだったとのこと。
…作品名も出されていたけれど忘れてしまい💦、調べると、玉さまの映画「天守物語」、玉さま演出の舞台「なよたけ」、「夕鶴」←(この作品はもともと山本安英さんという新劇の女優さんのために書かれたものだけど、この方がお亡くなりになった数年後、玉さまが演じたそう)等で作曲をされたそう。
筝曲家でもあったと書かれているので、楊貴妃の曲もなるほど、と。

今の楊貴妃の衣装は三代目なのだそう(日本製)。頭の飾りは(おそらく最初の時に)北京で購入したものとのこと。…京劇の舞台用品にそういった物を扱っているところがあるのか、はたまた本物?というくくりもよくわからないくらい門外漢な分野だけど💦あの美しいヘッドピースはどこでどのようにあるものなのか、気になる。


先月、今月と舞台から見える客席を私達に見せていただく場面。
舞台上に客席風景が現れたあとに、「こんなにも素晴らしい劇場」、というふうに玉さまが仰る時、表情がとても晴れやかで、お気持ちを前面に出してくださってる感じが凄く印象的でした。

「小さい頃からここで育てていただいて、数々の大役を立女形としても勤めさせていただきましたこと」というようなお話のとき、あと、冒頭や後半にも「歌舞伎座にご来場くださる皆様のお陰で~」というお礼を、座り直して近くから遠くのお客様まで見るように、背筋もさらに延びて、皆に届くよう仰ってくださっていることも強く感じました。
千穐楽だけでなく、その前にもあったけれど、この日は三度もそのようなときがあり、こちらもただただ嬉しくて有り難いし、一端を担わせてください、という気持ちでした!


( ゚д゚)ハッ!凄く大事なことを書き忘れていた!確か21日か25日の口上で、照明(室かな?)のお話になり、「小さい頃は照明さんの膝の上に乗り、センター(の照明)を当てていたりしました」とのこと!!これ大事!!!かわゆい!伸坊!!!


そして客席風景が舞台上に現れる場面。
「今日の千穐楽で最後ですので、寂しくはないんですが、私も見させていただこうと思います」のように仰られて、お座りになっているまま体を反対に向け、玉さまの背中が客席側になる。背中を観れる幸せ‼️
下手の花道のほうや中央、全体をご覧になられて、再び正面に向き直される。特に感想は仰ってなかったですが(笑)、玉さまはどんなことをお感じになったんだろうなぁ…気になる!


映像を交えた奈落の紹介の前。
海外のバックステージツアーに参加するときに、綺麗な衣装に手を伸ばそうとしたり楽屋を見ようとしたりすると「さわらないでください」「そこは立ち入らないでください」等と言われることが嬉しかったそう。それはそういう触ってはいけないものに何でも触れて着ることができる自分がとても恵まれてると幸せに思った、というときも、感謝の言葉を仰ってたようにおもう。


「奈落と言ってもこの世の奈落ではございません」の発し方が、最初の頃とはずいぶん違いました。最初は、仰ったあとに客席が面白くて笑う間がある、という感じだったけど、
この日はビシッと仰ってる感じでまるで別物で姉さんが言ってるみたいでカッコよかった!!


楊貴妃

前回(今月ではなくその前の)、楊貴妃を観たときは靴の先端、甲の部分に、
ふわふわとした毛がついているものだったけど、今回はシルバーの靴に
白いフリンジのような細い飾りがついている靴で、新しくなっているのを
随分前に確認してましたのでここに記しておきます(笑)。前回の靴があまりにもキュートだったので
今回も確めたかった(笑)そして今回も素敵な靴‼️


映像の中の音だけど、やっぱり楊貴妃の曲がどれも美しい。最初の筝の低い音色も、この曲で聞ける独特な音で大好き。


斜のスクリーンに映像が写り、方士が登場し、楊貴妃のもとへ。映像の楊貴妃の居るあの簾のかかるところと、実際のそれがスクリーンのうしろにうっすら透けて見える。
楊貴妃が登場するとき、照明がふわーっとピンク色になり雰囲気が一気に変わる。このとき、頬がまさに同じその色になるような、心のなかにぶわぁっと一気に花が開く、みたいな感じ…というだけでは物足りないくらいの高揚感。


ほんの一瞬視線を送る場面があまりにも凄すぎた…あんなにも濃密な瞬間を作り出せる人って他にいるんだろうか…


梅葆玖さんに目の使い方、歩き方、水袖の使い方など色々教えていただいたとのことだけれど、本当にすべてに魅了されて言葉にならない。
10/5に観た時に、「楊貴妃の心情的なものを色々知りたい」なんて思ったけど、もうとんでもない。
「考えるな、感じろ!」←冗談ではなく(笑)もうまさにそう。全身で感じる、感じられることがすべてだし、わかる。


映像とともに踊るところ。ほぼ正面から観ることのできたこの日に、映像に映る大きさと
実際の玉さま楊貴妃や、楊貴妃が出てくる居住まい?も、重なりかた、その対比が
どのようになるかということ、実際の配置場所も、すべてベストに見えるように
計算されてるのかも!ってことにやっと気づいた💦それまであまりにも自然に観ていた、
観れていた、ということなのかもしれません。


方士から渡されて受け取って読んでいく、という実際は相手が目の前にいないところや、
扇子や簪のしまいかた、渡し方が、客席にどう見えてどこを見せなければ一番良いか、
美しく見えるのかということも考えられているから、すべての場面に惹き付けられるんだと思う。


二枚扇で踊るところ。「サッ」と少し遠くの斜め下を見る時、鋭さというより
その空間を包み込むような感じと、楊貴妃の視線が注がれることで密度が増して、
でも次の瞬間には楊貴妃が次に移っているという儚さが、「楊貴妃」そのものな感じがする。


最後、水袖で踊るところ。
楊貴妃が最初にいたところへ帰る、向かうときに、この袖、腕を体から少し後ろに離して、
水袖を風になびかせるようにする姿、視線の向き、歩き方、すべてが大好きすぎる。
舞台写真にはこのショットがない(泣)あんなにも美しい瞬間がなぜないのか…
玉さまからしたらOKではないところなんだろうか…わからないけれど、
それと片方の袖を頭の上に掲げてらっしゃるところも好き。

この袖を使う時に、腕に袖を回転させまきつけたりする時がかなりあって、
あの場面ができるまでにはそういった準備があるからお顔と袖の位置やバランスが
保たれるんだろうなと思う。

今回の楊貴妃、どの瞬間も素晴らしすぎた…舞台上に流れる空気といい、
楊貴妃が醸し出すもの、楊貴妃自身、すべてが最高でした。


〈カーテンコール〉

前楽で感じたことの実践編がもうやってきた!!


そのまえに、まず最初に幕が上がり、舞台中央でお辞儀される玉さま。
二度目のカーテンコール。上手、下手、花道へときてくださり、花道ではやはり外花道の一番前の辺を見てくださってる、うらやましい!!(笑)

まったく拍手の熱がやまず、三度目のカーテンコール。この時に今回の玉さまの
あまりの素晴らしさに、スタンディングオベーションに値する!!と、
そうしたい気持ちでいっぱいだったけど、前方や、中盤では誰も立っていない。

だけど、もっと振り返ってよく見てみたら、上手後方にお一人、花道側に一人、
そしてもう一人途中から立って花道側は二人に。もしかしたらもっといらしたかもだけど、
全体からしたら数人で、「あーーーー!!こんなに素晴らしいのに!!私も立ちたいのに!!」
っていう自分の本心の声と、『お前のいる前方中盤、まわりでは誰もたってないし、
空気読めない、じゃま、とか思われたらどうすんの』というエゴの声がわいて、
しばし戦ってたわけです(笑)

…でもね、この「空気」、エゴの読み間違いであり、むしろ完全に逆。
「疎まれたくない目立ちたくない」という人目気にした恐れがこんな風に囁いてただけ(笑)

「でも!!!なんで躊躇する必要があるの!!立ってめいっぱい拍手して伝えたい!」
という本心を再度キャッチし「もしこの辺りで立つのが私一人であってもいい!!立つって決めた!!」
と腹をくくって立って、めいっぱい拍手!!(このときに、玉さまは花道の七三あたりにいらして、
舞台中央にお戻りになろうとしてた頃)

いつからかはわからないけど私の隣の方も立っていて、玉さまが舞台中央へ到着する頃には
、全体へと広がっていて総スタンディングオベーションになってた!!!

立つときに、「先だってスタンディングオベーションしてくれてた人たち、
置き去りにしないぜ!!」という気持ちでもあったし(笑)やっぱり最初に立つ人は
凄く勇気がいると思うから、本当にその方達へも拍手したい気持ち。
(というか、単なる人数の多さ少なさではなくむしろ置き去りになってるのは最初の自分らのほうであったのかも、とも思う)


皆がスタオベをして盛大な拍手をしている様子をご覧になった玉さまは、胸の辺りに手をおいて、
深く感じてくださっているのお姿が見えて、それがよーく伝わった。

こんなに素晴らしいものを見て、こちらが全力でこの気持ち、喜びをお返ししないなんて手抜きだ!
と今ならはっきり断言できる。
別に立つことがすべてなんじゃなくて、その人のできる最大で伝えないとその気持ち伝わらない。
手抜きは手抜きのままでしか伝わらない!!って思う。


そして、幕がおりたあともまったく拍手はやまず、当然のように次の4度目
(確か💦もしかしたら五度目だったかも)のカーテンコール。この時玉さまを目にして、
ほんっとにその美しさが(容姿だけでなく、舞踊、佇まいすべてではあるけれど、
この時、楊貴妃だから、というのではなく玉さまの内側から発せられるものが滲み出て
キラキラ輝きが見えて、そこに惹き付けられて心が震えたんだと思う)
あまりにも凄すぎて込み上げてくるものが溢れて、有り難くて幸せすぎて泣けてきて、
書いている終演後二時間後の今でも泣いている(カーテンコールだけ先に書いていた(笑)💦)
私の隣の立ってらした方…もしかしたら「私も!」と思い立って下さった方も、
泣いてらした感じだった。

きのうの前列の方の素直な行動が響いたこと。そのことをこの時に考えたわけではないけれど
自分のなかには確実に落とし込まれた出来事で、影響しないわけがなかったと思う。
前楽の方にも有り難い気持ちでいっぱい。

今日選べた「スタオベする」、という選択が玉さまに最大の気持ちを伝える形になったこと。
また思っていた以上の結果になって、(私の他にも同じときに立った方がたくさんいらしたかもしれないけどまずは自分事として)、
本当に本心直結の行動をとるとこんなすごいことになり、幸せな気持ちが何倍何十倍にも膨れ上がることを実感した1日でした。


あとね、今後も、人の反応や少しのおっくうさを手抜きの理由として正当化するんじゃなくて、
自分の気持ちをできること最大限でお伝えする、お返しする。もっと本気の100%200%でする、と心から思った。
どれだけ返しても返したりないくらいの素晴らしいものを、幸せをいつも玉さまからいただいているんだから。
観客という位置でふんぞり返るな!出し惜しみなんてしない!全力でお返しする!!と自分に誓ったこの日の出来事でした。


玉さまの「楊貴妃」、そして2ヶ月にわたる映像を含めた口上、本当に本当に素晴らしかったです!!