やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「坂東玉三郎 能楽堂特別舞踊公演」 6/15,16  MOA美術館能楽堂 ①

去年のコンサートで初めて拝見した場所。今年は舞踊公演。

一日目の土曜は脇正面の席で。二日目は脇正面と正面の間のような席で拝見しました。

 

他の劇場では音楽があり「とざいとーざい」の声があり幕が開くけど能楽堂公演では何もない。

揚幕から本舞台へとつながる長い廊下の「橋掛かり」。薄く照明のついたこの場所から玉さまが出て来られて、本舞台へ向かわれる。衣擦れの音がして、玉さまの足音はほとんどしない。シーンと全員が見つめ集中するこの時間は、他の劇場ではありえない。

この瞬間のピンと張りつめたなかでの心地よさ、雰囲気がたまらなく良かった。

 

<口上>

裃でない、八千代座映像舞踊公演のときの拵えの玉さま。あの時からこの拵えが定番となっている気がする。玉さまは何を着ても素敵なんだけど、裃でないお着物のお衣装でのストレートな美しさの現れかた、好きです。でも裃でも好きなんですが(笑)

本舞台中央にお座りになられた玉さま。土曜の方が客席も緊張感が強かったように思う。橋掛かりから歩いて来られてきたときからあるその厳かな空気の中、お話くださった。

こちらの能楽堂では、去年の歌の時と、その前は約30年前、1988年から4年に渡って公演されていたとのこと。去年の歌のときは、靴のまま上がってお歌いになることに対して抵抗があったけど、公演を決めてしまったものだから(笑)やらせていただきました、というふうに仰ってた(笑)

こちらへは昔勉強のために通っていたこともあるとか。お能を始め、歌舞伎に限らないいろんなことを学んでらしたのかなぁと思う。

日曜の口上では、「今日は花火大会があるそうですが(玉さまがその地元密着的かつなじみのある花火についてお話くださったことに会場が湧く(笑))昔はよく来させていただきましたが・・・」とそれから足が遠のいてしまったようなこともお話されてて、「花火が好き」とお答えになっていらしたことも聞いたことがあるし、このことだったのかなぁ、と思った。

上方の舞である地唄舞を江戸の役者が舞わせていただくことは今だからできること、能舞台に立たせていただくことも昔は考えられなかったということ。地唄舞の真似事をさせていただきますが精一杯務めさせていただきますので、ご寛容のご見物を、というように仰って、本当に謙虚に仰るけれども、まったくもってそんなことはない時間が、この後待っているのです。

土曜の口上では、一旦お話終わり拍手が終わった後に、あと(これだけはどうしてもというような感じ)本日はお足元の悪い中、お越しくださり・・・そして去年のコンサートは猛暑の日だったので、今年はこの季節にしたものの(というところで玉さまと会場から笑い(笑))雨と風があったこの日のことを、二日前から予報を聞いて気にかけ心配してくださっていたこと、当日は大雨と言われていたがそこまでではなく、交通機関が遅れることもなくて安心されたことをお話しくださった。日曜はお話の流れのなかでこのことも仰っていて、土曜の帰りの時点では雨も小雨になっていたことにもふれ、本当に気にかけながら、よく見てくださっているんだなぁと思った。とても有難かったし嬉しかった。

 

他の劇場とは違って、客席が舞台横に設置されている脇正面があるので、ご挨拶の時にはこちらへも向いてしてくださり、その時の一瞬が私達観客側も、玉さまも、ふわっと一段顔色が明るくなるような、「玉さま見てくださっているんだな」ということが感じられて嬉しかった。

脇正面から見られることは、踊り手にとってなにか放り出されたような不安な心持ちがしていましたが、回数を重ねることで何とかなりましてございます、ということもお話されていて、今回は橋掛かりを使うものはないが、今後橋掛かりを使うものをやっていきたいということも仰ってました。

 

口上の最後に仰る「隅から隅までずいーっと」も、会場の雰囲気に合わせてお話の最後に仰ったような感じで、心地よい緊張感に包まれた、いつもとは違った口上でした。

口上が終わると、静かに立ち上がられた後、客席に後ろ姿を見せないように下がり、そして橋掛かりから揚幕の中へ。玉さまの体が動くことにより発せられる音(といっても少しの衣擦れの音以外しない)以外何も音がしない静寂の中、その間も皆がじーっと玉さまを見つめて(見とれてという感じかも)その中歩かれるのはとても緊張しそうなことだけれども、静かに歩かれる凛とした中に穏やかさを感じる玉さまは、それだけでとてもとても美しかったです。

その②に続く。追記するかも。