やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「坂東玉三郎 シネマ歌舞伎『鷺娘』上映 解説とトークショー」② 6/8 長崎ブリックホール

今回開演前に募集した質問、あまりにも数が多かったために、事前に集まった質問に目を通して、多かった同じ内容には玉さまお一人でどんどんお答えになり、その後吉井さんが一つずつの質問をするということで、略歴から引き続きお一人での登壇。
お答えになる前に「お答えするのに一言でバッサリと(一問一答みたい)答えて終わりになるものや、長くお答えするものもあるかもしれませんが…(そこはご理解いただきたい)」というようなことも仰ってました。

  • 美しさの秘訣は?

「衣食住をきちんとすること。今食べたものはすぐ(体に)現れるわけではなく10年20年あとに出てくる。だから大量に作ったり日持ちさせるために使われてるようなもの養殖のものより、値段はするけど、良いものをとる。体に良い服(布)を選んだり、体を動かしたり。
他(美容等)は私よりもそういうことに詳しいことは(世の中に)たくさん出ているから、そちらを参考にご自分に合うものを選んでいただければ」というようなことを仰ってた。

  • 一番好きな舞踊(演目だったか?)は?

「今の(上映したばかりの鷺娘)でした(演じ終えているから、過去形をお使いになったのだと思う)」と仰っていた回答もあったし、思い出に残る演目は?だったか・・・その時はいくつも挙げられていたと思う。京鹿子も鷺娘も阿古屋も天守物語も。で、この時にお答えになっていたことではないと思うけど、泉鏡花作品の狂言は昔からお客様が入りにくい不入り狂言と言われていて、玉さまのお義父様、勘彌さんが演じたときはわかりにくいところを加筆したり、削ったり、工夫されていたそう。で、この時に観たことが印象に残っていて(玉さまが仰っていた言葉はもっと素敵で、違うんだけど、憧れるようなキラキラした気持ちで見ていたというような感じ)それで玉さまご自身が後に演じたときはお客様が来てくださり・・・というようなお話もされていた。その時に、シンセサイザー冨田勲さんの曲を取り入れたり、新しい試みをしていた、とのこと。


そして、玉さまお一人での回答が終わると、吉井さん登場。
玉さまのお着物について、吉井さん「紫陽花に合うお着物の色で」玉さま「有難うございます」吉井さん、そのとーり!!!その①で書いたお着物と袴の色が本当に紫陽花にぴったりで物凄く素敵だった!!!
で、玉さま「紫陽花ってどうして色が変わるか知ってる?」吉井さん「いや、わからないですね」玉さま「土が酸性かアルカリ性か…とかで色が変わるんですって。…あ、また話が(脱線しちゃう)」玉さま、可愛い…(笑)。

で、先程の留学生の人達に(鷺娘を実際に観て)「いかがでしたか?伝わりましたでしょうか?」というような問いに、留学生の人達の大きな拍手。第一部の時の心もとない拍手とは違って明らかに力のこもった拍手が聞こえた。
その拍手が聞こえるすぐ前、私のすぐ後ろの席のおじさんが「そりゃ伝わるよな!あれだけのものを観たら!」って興奮ぎみに言ってるのが聞こえて、そのおじさんが開演前話していたことも聴こえていて、地元の人でしょっちゅう舞台、歌舞伎等みる人ではないのかな、という感じで(でもすごく好意的、興味がおありの方で『(実際に)踊るのも観てみたいよなぁ』等お話されてた)そういう方が、理屈ではなく観て感じるということで物凄く受け取っている、確実に伝わっている、ということがその言葉からひしひしと感じられて、感激した。昔から見ていて自分が知識がある、という自負があり、感じるということを蔑ろにしている人からはそのような感想は聴こえて来ない。比較と批判・批評的に言おうという気持ちがにじみ出ているから。回数を見ているということがイコールそういう見方になる、ということでは全くないけど、そんな人の言葉がごくたまに耳に入ってきて不快だなと思ってたので(笑)対照的だなぁと思った。
知識なんてなくたって、心で、魂で、こんなにダイレクトに感じられる人は本当に宝を持っていると思う。こういう感想こそ人の心を打つし、本当に「伝わってる」そんな気がする。

  • 最近見た「夢」はなんですか?

「三か月前(二か月だったかも)、舞台で台詞を忘れて困っている夢を見て、夢を覚えていること自体がなかなかないのに、その夢は覚えていた」そう。「思考と夢は繋がっているそうだから」とも仰っていて、三か月前の三月といえば南座で阿古屋と舞踊、その前は名月八幡祭。この辺りでそういう思考と関係があったのかな・・・夢でストレスを解放するということも聞いたことがあるような気もするけど。無事に終わってよかったです!!

  • 緊張しやすいです。玉三郎さんは緊張したときどうしていますか?

この質問を読んだ吉井さん「玉三郎さんは緊張されるんですか?」玉さま「はい、します」・・・この後なんてお答えになっていたか忘れてしまったので思い出したら書き加えよう。

  • (歌舞伎の)後継者は誰ですか?

「歌舞伎の後輩全員です」・・・この質問の時だったか玉さまが「なし崩し的に教えて(伝えて)いる」「聞きに来られたら出し惜しみなくすべて伝えています」の言葉に吉井さん「もし、聞きに来ない、という場合は・・・」玉さま「その時は、聞かれないのだから教えようが(伝えようが)ないですよね」
・・・この質問をどストレートに聞いた人、ある意味すごいと思ったし有り難い。玉さまが「後輩全員」と答えてくださったこと・・・この回答が聞けてよかった。以下私の個人的な解釈、というか単に私の思い。

…あるお役をどなたかに教えてそのかたが演じたときに「玉三郎さんを継げる(こんな直接的な書きかたでなくとも)のは〇〇さん!」みたいに書かれるのは、好きじゃない(笑)他の人にはないなにかが、玉さまにはあるから。
あくまでも、私の中での話ではあるけれど、玉さまは唯一であり、玉さま以上の人はいない。それは、ほかのどんな人を観ても感じること。
他の役者さんがたとえどんなに「玉さま(の芝居)に似ている、そっくり!」と誰かが思うような芝居をしても、観れば観るほど、その中に唯一である玉さまの凄さを感じずにはいられないし、その唯一は揺らがなくなる。
だから誰か一人だけがなにかを「継ぐ」ということは無いなと思っているし、逆に「全員」であるからこそ「全員に開かれている」ということであると、思う。

  • 〇〇さん、八歳の方からの質問です。日本舞踊を習っています。上手くなるにはどうしたらいいですか?

「とにかく練習すること。」
・・・別の踊りに関する質問だったか、この質問の時だったか、「上手く踊るコツを」みたいな質問の時だったかな。玉さま「振りの(曲、歌詞かな?)意味を分かって踊ること(が大事)。振りには、意味のない振りと、意味のある振りがあるんです。意味のある振りを理解して踊ること。例えばどこにその(歌詞に出て来る)相手の人が相手いるのか。自分の向いている方に相手がいるのか、向いてないんだけど、そちらに居る、ということがわかっていてそちらを見ないで意識しているのか。」・・・その景色がちゃんと見えているか、ということ。だからその情景が玉さまの踊りからは見える、感じられるということなのではないか、と見ていて思った。

  • 玉三郎さんのひとつひとつの仕草が大変美しいのですが、どうしたらそのようになれるのでしょうか?

「体の中心を意識すること。体の軸(の線)がしっかりしていれば、手や足は後からついてくる。手や足を先にしない」
・・・このことを聞いて、玉さまが人にあいさつをするとき、話をするとき、相手に頭だけでなくて体ごと全面を向ける、胸から向ける、というようなことが書いてあったのを思い出して、それもこのことに通じるのだろうなと思った。相手に対しての礼儀というのもあると思うけど、そもそもそのように在る、という。だから、相手に体ごと向けるということがごく自然なことであるのかもしれない、と思った。

  • 人生がうまくいかない35才、どうしたらよいでしょうか?

「上手くいかないときは、たくさんある。そういうときは、海とか空とか(そういう)自然を見て(悩みの)小ささを感じることが良いのではないでしょうか」…この質問のときではなかったかもだけど、「人に話すこと」人に聞いてもらうこと、そのようなことを仰ってた。

  • 人生の終わり方について考えています。玉三郎さんはどのようにお考えでしょうか?(というような質問だったはず)

・・・この質問に対する答えだったか、近いことを仰っていたときだったか、ちょっとごっちゃになったことを書くけれど、「(お客様に)見えているところは綺麗なものに見えるかもしれないけれど、実際は周りの人を巻き込んでいたりしている。とはいえ、この後も、巻き込んだりわがまま言ったりするかもしれないけど・・・」「迷惑がかからないようにはしたい」など。

  • 一ヶ月のお休みがあったら何がしたいですか?

「半分は家の中の整理をして、あとは良い芝居、映画を観て、あと旅行」
…ここで、玉さまが「先日イスタンブールとモロッコに行ってきたんですが」とお話があったと思う。「イスタンブールは東と西の文化が交わる(?かな)シルクロードの始まりのところで行きたくて」吉井さん「二つの国両方とも空が青い国ですね」玉さま「モロッコって、知ってる?『薔薇の香り』っていう意味があるんですって」吉井さん「薔薇の香りはしましたか?」玉さま「チューリップとか○○←忘れた💦、の花があってその香りが」のように仰ってた!    

  • 今後の予定は?

八月の納涼歌舞伎には出ます。(長崎近辺のことでいうと)博多座は来年はありません。
・・・同じ質問者の方がもう一問書いていて、それにもお答えになっていたのだけど、思い出したら書く!

あと、どの流れでこの話になったのかは忘れてしまったけど、「友達を待っているときも、木陰でのんびりする時も(どんなシチュエーションでも)スマホを見ながらやっていたのでは、それは『友達を待っている、木陰でのんびりしている』のでもなく、スマホを見ているだけ。私はスマホを持っていないし、パソコンは資料集めに使うけれど、それで人とやり取りはしません。実際に人と会うこと、(スマホを見ながらでなく)どこかへ行ってのんびりすることをする、ことを大事にしたい(だったか、大事に思っている、など仰っていたと思う)」「だから、直接、一対一でお話はできなくても、こうして(このトークショーのように)対面することが大事だと思っています」
「(なので)これからどのような時代になってしまうのか、想像もつかない(ネガティブなことしか浮かばない、というようなことを仰ってた)」「技術が良くなっていっても人の心がないとただの技術になってしまう。良いものを作りお客様と気持ちを共有すること」吉井さん「そのなかに今回のお客様も含まれている、ということでよろしいでしょうか」玉さま「もちろんそうです」のようなやりとりがあり、それを聞いた吉井さんが「では新しい技術の中で期待したい(できる)部分(プラスの面)はなんでしょうか?」と!!聞いてくださって、そっちにぐいっと向けてくれた吉井さんありがとおー!!!って思った!!!吉井さんが「先程のシネマ歌舞伎天守物語の新しい技術やシンセサイザーも、(プラスのこと)ですよね」というようにお話してくださり、玉さまも「そうですね、シネマ歌舞伎や・・・」と、同意と言った感じでお話してくださったので、ほんとに感謝!!!
こういう時にね、全部イエス、だけで終わってしまうこともよくあるんだけど「プラス面も当然ありますよね」の勢いでこうお話してくださると、プラス面があることを認めざるを得なくなる。玉さまの仰っていることも良くわかるし、私も「今、ちゃんと感じれてれないな」って思うこともよくある。でも、確実に良い面もあるし、そこに方向を向けてくださった吉井さん有難い。玉さまはどうお感じになったかはわからないけど、怖気ずにはっきりこう言って下さる人はいいなぁと思った。

お客様のためにしか生きていないんです(演じている、かな、ちょっと忘れた)というようなことも仰っていて、自分のために演じたことは一度もない、と。今までやってきたこと(女方、歌舞伎役者として指導されやってきたこと)はそのために、なっている、と。


鷺娘を感覚で感じたおじさま(もうおじさんではない(笑))をはじめとして、体験する、感じる、ということは(映像であっても)とくに舞台を観ることで得られるし、今回のように玉さまに直接会うこと、同じ空間で対面できることがとても嬉しく、貴重な機会だと思う。その一回一回を、頭でなく、体感で、心で、魂で触れたい、感じたいとより思った今回だった。

また、質問用紙の数、鷺娘に感激したおじさまを始め、舞台、歌舞伎、玉さまに注目する人達がこんなにいるのに、それらに直接接する機会がないのはもったいないことだなぁと思った。玉さまが仰っていたように、そういう機関に働きかけること、リクエストをすることは物事を動かすし、また玉さまも、そのことについて前向きな感じのことを仰っていたので、今度は玉さまがこの地に歌舞伎で、舞踊で、来ていただくこと、みなさんが観れたらいいのにな、ということ、そして私も観にいくぞ!ということ(笑)、また、シネマ歌舞伎も取り入れてくださったらいいのになと思った。

あと、質問の内容がとてもまっすぐで、年齢層も様々で、本当にいろんな方が玉さまに興味をお持ちになって、こうして会場まで来て・・・ということを思ったらじんわりと嬉しくなっていた。いくらネットやDVD等で見られるとはいえ、ほとんど歌舞伎、シネマ歌舞伎に縁遠かったこの地にたくさんの人が来てシネマ歌舞伎を観て玉さまの話を聞いて・・・って凄いことだなぁと思うから。このご縁が次へとつながるように、また、この長崎の地で、玉さまにお会いできることを望みます!!!