やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「坂東玉三郎 京丹後特別舞踊公演」5/11,12 京都府丹後文化会館

珍しく公演日に書けそう!と思ったら書けなかったので今日更新💦→12日分もまとめて改めて書き直しました。

今年も来ました、京丹後公演。始まってから四年目なんですね。今年はチケットにも力を入れてくださってます。
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右が土曜、左が日曜。色も変えてくださってます。玉さまのサインも入ってる!!(うつりがいまいちなのであとでさしかえますがとりあえず→差し替えましたけど色の美しさが全部写りきってない。特に左日曜分が実物は角度によって色の見えかたが違う!)
玉三郎丈の家紋である『熨斗菱』を織り込んだ正絹の丹後ちりめん使用」とのこと(配られた冊子の実行委員会長さんのコメントより)
私、土曜分はもともと松竹の、ふっつーのチケットだったんですがそういう松竹購入の人の為に、わざわざこのちりめんバージョンも用意しておいて引き換えてくださったんです!!!(というかちりめんのほうもいただけた上に確認されたチケットは回収されることなく持ち帰れるという)これはすんごく嬉しかったサプライズ!!粋!!
ちゃんとちりめんで作ったものを直に手にして持って帰ってもらおうという。しかも玉さまの家紋入り!!こんなことしてくれるとこないですよ…ありがたやー京丹後の実行委員の人達!!街中の幟もちりめんでできているしほんとにこういう細やかな気遣いが嬉しくて感激します。

一、口上

今回の口上は、八千代座映像解説舞踊公演のときの、口上と解説のときの拵え!!その柔らかな色合いのお着物や帯が大好きなんですけど凛としてシュッとしたお顔で、にこやかな表情の玉さま。

いつものように玉さまの仰ったようには書けないんですけど、だいたいの内容、ということで。若干違うところもあるかもです。

下見に来たときから数えて五年目、話したいこともたくさんあるけれど、話があちこち飛ぶので繋げて聞いてくださいという一言(笑)二日間とも仰ってました。
一日目は特にシーンと聞き入る感じの客席だったので、こういう一言で雰囲気が和らぎました。二日間とも聞くことで、玉さまの仰りたいポイントがよくわかりました(頭ではわかったんですが上手く書けない💦)
京丹後といえば絹の道、歌舞伎役者にとっては切っても切り離せない存在で、今までもそのことについてはお話させていただいていたので今回はちがうお話を、と。
お蚕さんは農薬をまいた葉は食べないということ、良い桑の葉をたべたお蚕さんは金の糸をはくということを、お聞きになったそうです。
ここから5月のコメントにもあったシルクロードの話になり、日本へも文化がもたらされたシルクロードは知っておきたいと思い、ただすべてを回るには大変なのでイスタンブールへ訪れたということ。さまざまなところから訪れる人がいて、皆やさしく、東と西からの文化が交わるところ。そこで百年、三百年…ともっと昔に作られた絨毯があり、玉さまもお好きだそうで、そこで百三十年も前に作られた絨毯があり、黄色い糸の部分、それがとても細やかで、夕陽に当たると金色に光って見えるとのこと。それを玉さまも一枚購入したそうです。
シルクロード、京丹後と、人と絹はどうして昔から今まで繋がっているのか、理屈では説明できないけども、(玉さまの)感覚でだけだけれども、そのつながりは理解できる、という風にお話されてました。

口上でのお話は、今朝ふと考えたことをお話したとのこと、そのことを玉さまは恐縮されてましたけど、その新鮮な想いを伝えてくださったことが、今お互い顔を合わせて同じ空間にいる、そのことをより感じられてなにより、玉さまの頭に浮かぶことをダイレクトにシェアしていただいたようで、そんな恐縮されてた玉さまに「とんでもないです!それがいいんです!!」というような気持ちで聴いていました…。ほんとに、そのようにお考えになったことをその日に聴けるって有難いことだなぁって思います。

今年の衣装は(口上以外)すべて京丹後のちりめんで作られたとのこと。最後の「由縁の月」の衣装は(今まで、歌舞伎座等の時は)綸子(精練した生糸で織った、厚くてつやのある絹織物の一つ、だそう)に刺繍したものを使っていましたが、今回は黒いちりめんの生地を使って作られたそう。

冊子の実行委員長さんのコメントでも書いてあるのだけど、記者会見の時に玉さまが「劇場が小さめですので、丹後ちりめんの衣装の方があまり衣装らしくない江戸の人たちが実際に着ていたような味が出るのではと思っています」…実際それが一目でわかるような衣装だったんです。

今回は地唄舞四題を踊るとのこと。お客様にお楽しみいただけるかどうかわかりませんが、心を込めて精一杯踊らせていただきます、ということを仰ってました。

二、雪

Eテレで放送された「雪」あの設えです。蝋燭が二本あり、その真ん中で玉さまが踊り、上手に富山清琴さん。富山清仁さんのお琴の演奏も途中から入るんですが、舞台上にはいらっしゃらず、舞台袖でひいてらしたようです。
勘九郎さんが玉さまとの舞踊のときには(吉野山の演目で)「桜が見える」と仰ってましたけど、この時にも玉さまの視線の先に雪が舞っている景色がある、ほんとにそのように見えるんです…玉さまの演じているその方が体感していることがまるで目に見えるようであり、ゆっくりとした中での手や傘の動き、動く空気、衣装の角度、すべてが表現であるということが感じられるし、蝋燭、富山清琴さんの三弦と唄が作り出す雰囲気も合わさって出来上がるこの世界は地唄舞の良さだなぁと思います。

三、鉤簾の戸

団扇をもち、半分寝ているところから上半身起こしたような姿勢(こう書くと雰囲気もなにもないように思えるが違います!艶やかな場面)から始まるのです。
「恋人を思う女性の細やかな情愛を描いたもの」で、その恋人と思い合う場面などもでてくるのだけど、そういうときの玉さまの恋人への視線が含む意味合いが場面ごとにガラッと変わって、観ているこちらもはっとする…ほかの演目でもキッと睨むときだったり柔らかな視線だったり本当に豊かな表情といつも感じるんだけど、お相手のいる(という設定の)舞踊ではそれが明らか。視線ひとつで現せることの凄さがわかる。
この演目では胡弓が演奏されるんですが、胡弓が入ると不思議な世界になるんだなぁと思う。現世感が歪んで見えたのは次の黒髪だけど、この胡弓でも他の楽器では表せない独特な雰囲気がありました。

四、黒髪

「辰姫が頼朝との恋をあきらめ、時政の娘に頼朝の妻の座を譲りふたりを寝間へと案内したあと、悲しみの内に髪を梳く場面に使われた長唄の『黒髪』この詞章とほぼ同じものを用いてるのが地唄の黒髪」とのこと。どこを切り取って書いたらいいのやらと思ってこんなに引用したのだけど💦
玉さまの他の黒髪の動画で出てくる拵えとは違って、「姫」だったんですよ!!舞台両脇に大きく広がる(金かな?もっと抑えた色かも)屏風のその真ん中に、悲しみとやるせないその姫がもたれかかっていて、その気持ちとは反対に姫の淡く明るい橙色のような着物と水色の帯、姫の鬘、花かんざし…その対比がたまらなかった。演奏と唄、その姫から、怨みから作り出した現世ではないような世界、雰囲気を感じて鳥肌ものでした。鏡を見て髪を梳かすその櫛があまりにも美しく磨かれて光って見えるものでその光と姫の闇が相反するようで姫の気持ちを表しているようにも見えました。
「黒髪」のこういう世界観好き…。

五、由縁の月

廓文章の「夕霧」さん。で!!も!!…違うんです。夕霧といえばあの遠くからでもわかる豪華な衣装、が頭に浮かぶところ、ここで「丹後ちりめん」ですよ!!いやその前からもずっとちりめんの衣装なんですけど、それが一番わかりやすかったのはこの演目でした。中は橙から赤のような色のお着物を着てらして、打掛は、黒地に背中の真ん中部分に小さめのキラキラした月、裾に主に金の糸の刺繍が施されていて、歌舞伎座で見るような立体的でおおきな派手なものではない、落ち着いた、でも黒字に金が素敵な衣装で、この劇場だからこの美しさが映えるんだなぁというものでした。
これはお写真見たい!どこかで掲載していただきたい!!
衣装といえば…今回とくに感じたことが、その表現。「この演目、役にはそういうもの」ということなのかもしれないけれど、それ以上に、衿の部分の折り返してその内側の赤の色の出し方、見せ方。黒い打掛の中の朱というか橙のような色のコントラスト、後ろ姿から正面を向いたときの裾の部分が三角に残る美しさの角度、衿の抜き方、そこから見えるうなじ、打掛と中のお着物が見える割合と比率、打掛の掛け方…。
すべてが美しいんです。言葉で説明することのない、そのひとつひとつが知らずのうちに視覚から、雰囲気から、醸し出されるなにかから、私達は受け取って感じているんだなぁということを実感しました。
玉さまのその姿勢、角度、動き、打掛の掛け方、裾のさばき方…それももちろんですけど、その衣装を着せる方達であるお弟子さんや衣装さんて何て凄いんだろう…と、そのことの凄さ、偉大さにもやっと気づいたわけです。形、型があり玉さまの指示があり…でもそれをあのようにして実際に観る者が心打たれるようなひとつひとつの美しさを作り上げることがどれだけ凄いものを目撃していることか…ほんっとに素晴らしいものを見せていただいている、そう思わずにいられませんでした。
玉さまの躍り、動き、衣装、衣装から表現されるもの、空気、雰囲気、音楽、唄、その世界…なんて豊かで素敵なんだろう、と改めて思いました…。

カーテンコール

ありました!起こりました!カーテンコール!!
由縁の月の衣装のまま、真ん中に座ってお辞儀されている玉さまが登場。お顔をあげたときの、役の時とは少しちがう、パッと晴れて少しふわっと軽くなった雰囲気と、玉さまのお気持ちがこもったお辞儀とその角度からのすべてが美しくて、見ているとこちらも嬉しくてさらに拍手。一度目が終わり二度目のカーテンコール。今度は立ってくださって、上手、下手にお辞儀をされ、そのあと打掛(玉さまの背中側)をまるで演目中のようにびしっと決めて見せてくださった!!!なんという有り難さ…ここで作られた衣装をきちんと見せてくださり、地方で、この京丹後で公演をすることの意味、大事にしたいもの、残したいもの、いろんな思いが伝わり沸いた場面でした。
そして三弦・唄の富山清琴さんと筝・胡弓の富山清仁さんへ拍手を、と手をかざされ、おおきな拍手。お二人の演奏、清琴さんの歌も凄くて、ほんとに充実した地唄舞の公演でした。
一日目のとき、あまりの嬉しさに拍手に紛れてうっかり小さく変な声出てしまった(笑)それくらいカーテンコールのときの玉さまを観ているとじわじわ歓喜や幸福感のような感覚が体いっぱいに拡がる…玉さまの想い、感覚が伝わってくるのか、見て感じるものがあまりの喜びなのか…わからないけど、とてもとても幸せで特別な時間でした。