やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「二月大歌舞伎」夜の部 歌舞伎座 2/20,2/26

自分のコンディションにかなり左右された前回の観劇💦そのことにより、珍しく玉さまオンリー(そしてにざ様)よりも、引いて全体を観るということが出来たんだけど、20日、千穐楽は、また違った感想を持つ観劇となりました(笑)

 

名月八幡祭

20日の日は観劇前にシネマ歌舞伎を観ていたこともあり、玉さまの芝居の上手さ、舞台上のひとすべての熱のある演技が本当に好きで、しみじみ、観てよかったなぁと思っていたわけです。

その後の夜の部。熊谷陣屋での吉右衛門さん、歌六さんの、心で芝居をすることと冷静なコントロールの上手さに見惚れたあとの、美代吉玉さまと三次にざ様。

三次の余裕のある男っぷり、殿の前でバツが悪そうでも三次の言うことは聞いてしまう美代吉、そんな中にも芸者としての意地とプライドはきっちり芯にある。こういうことすべてを説明的でなく本当に自分というものをすべて使って表してそれが自然に観客にもきっちり伝わることがやっぱり凄い人たちなんだと思う。

あと三次が美代吉に抱き着いて美代吉をすっぽり覆うときのお二人が最高すぎる!!お二人のいい意味でふっと軽くできる(ているように見える)感じが三次美代吉の仲をも表してるようでたまらない(笑)

その後に歌六さんの魚惣、そこへやってくる松緑さんの新助。歌六さんの江戸の粋な人の表現が本当に素晴らしくて、松緑さんは生真面目なまっすぐさが表情や台詞の言い方や物腰にとてもよく現れていた。

二人の前を舟で横切る美代吉の、その二人への話しかけ方が、実際は目の前を横切っているんだけど、あたかも距離があるかのような遠くへ声をかけているような感じで、こういうところでも細かい工夫があるんだなと思った。

美代吉と、母親の歌女之丞さんの場面。歌女之丞さんは、毎回、外さない間や、セリフの言い方、動きをする方だけど今回もまさにそれで、美代吉が母に色々頼むところも人間的な可愛らしさが現れてて台詞の言い方や語尾の伸ばし方も可愛くてずっと聴いてたいくらいだった。

新助が現れてから、お酒をちびちび呑んでていつのまにか酔ってる美代吉玉さまが可愛い!そこからふて寝する美代吉、その美代吉の寝顔を見て見とれる新助、寝起きの美代吉ってすべてがたまらなく可愛いんですけど(笑)

新助に上目遣いで見られる美代吉にもなってみたいと思うくらい新助も可愛くって、そんな新助をだますつもりでなくついつい調子よく言ってしまった美代吉が、やる気になった新助を見た直後にすまなさそうに思う様子もよくわかって、根は何もわるくないんだよなぁ。でもついつい新助にいい顔をしてしまう。

美代吉になじられた三次が、刃物を持って美代吉の前に現れたとき、最初は美代吉も驚いてるけどすぐに三次が刃物をひっこめるだろうということをみこした美代吉の態度の変えかたの速さも、その後に三次と仲直りしたときの夫婦感も、自然で流れるようだった。

新助がすべてを知って騙されたと思い、美代吉の家を出て花道に差し掛かる時。その時の松緑さんの表情が観たい、という願望が千穐楽で叶った。絶望のなかに狂気が顔を出したような表情に鳥肌が立つようだった。

祭りの場面。花道から両脇を男の人達に支えられてやってくる美代吉が、酔っていてさらに気が大きくなっているのもあるけど、芸者としての器の大きさが感じられた。気がふれた新助の不気味さも凄く良かった。

ここで新助の噂を聞いた祭りの人達が、「いつもは軽く持ち上がるはずの神輿が今日はなぜか重くて、汗をびっしりかいたみたいな跡があった」という、直接的にはなにがどうということではないが、話を一つの方向へもっていく伏線があり、それが全編を通していくつも張られていて話としてとてもよくできていて、その一方向へ持っていく力が凄くある作品だと思った。

最初に、「故郷にいる母が待っている」という新助の一言で、家もなにもかも売ってしまった後、あのときの話にでてきた母親は一体どうなってしまうのか、と、後に説明しなくとも勝手にそういう場面を想像したし、夏だから蚊の出てくる場面がある、といえばそれまでなんだけど、それだけではない不穏さを蚊ひとつで感じられるし、新助を心配して探す歌六さん、祭り最中に初めて江戸に来た人が背に回した刀を新助が手にすること・・・それらすべてが、話が一つの方向へ向かう要素であって、その方向へすべてが巻き込まれる、その感じが本当に好きだった。

その後に「橋が落ち」て皆が右往左往することも、一気に場面全体を闇へ落としていった。

新助が美代吉を待ち伏せて斬りかかり続けている時、松緑さんはどういう表情をしてるんだろう。なかなか見えなかったけどその姿からしても十分すぎるほどの狂気だったし、美代吉にお金を投げつけ、追い込み、最後に斬り殺す。その後の茫然としながら綺麗な月を見上げる様子の美しさと凄惨さのギャップ、最後まで狂気から覚めない新助の迫力が本当に素晴らしかった。

新助に刀を向けられて動転する美代吉、斬られてお金を投げつけられながら逃げ、柳の下に追い詰められたときの美代吉の表情、雷と雨に打たれながら鷺娘が斬られた時のように肩から赤い衿が大きくでた姿、小屋に逃げ込んだ美代吉が殺される最期。

話の最初から最後のここまで、こんなにもたくさんの玉さまが観られる演目ってあるんでしょうかね・・・。あるのかもしれないけどでも!!ここまでの振れ幅、本当に凄い。

 

一番最初に観たときは、松緑さんありきで、と書いてそれはもちろんあるけれど、玉さまにざ様がその役の中で全力で演じて居られるのだということ物凄く感じた。役の細やかな表現ひとつとってもそう。玉さま、にざ様とのこの演目を演じた松緑さん、それらを観ることが出来た自分も、本当に幸せ者だと思う。前回も同じようなことを書いたけれど(笑)、でも何度でもそう思う。

例え不可能だとしても、この演目、この配役でもう一度観たい。本当に素晴らしかった。