やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「秀山祭九月大歌舞伎」9.12 夜の部 <幽玄>

 羽衣

去年の鼓童との舞台「幽玄」の時と始まり方は一緒で、舞台上に太鼓が並び、そこに鼓童のメンバーが入ってきて演奏が始まる。舞台が始まる、といういつもの合図もないし、暗くなり始めたところから始まってる。歌舞伎座は上演中でもしゃべる人が多いけど、幽玄で作られたおしゃべりをさせないような厳かな雰囲気、最高だった。鼓童のひとたちが音で作り出す天上界へと延びているような世界、去年の幽玄と同じでこの表現力はやっぱりすごいなぁと思う。11人(も!)の伯竜の人達、玉さまの美しい天女。去年の幽玄の時は、花柳流の方達が舞で天女が去っていく様子を表していたけど、歌舞伎座では盆を回してさーっと天女が去っていく、そういう演出になっていた。あんなに大きい舞台をさーっと天女がさっていくなんて最高過ぎる(泣)!!!もっと回っていて欲しかったなぁ…ぐるぐるまわっておくれ…って思うくらい好き場面。回っていく時、奥に行くほどその高低差を表すために玉さまが背を低くしていて、でも天女は舞台奥に去ってしまうのではなくて、花道前まで盆に乗ってきて花道から去っていく。もう言うことない。好き、最高。

 石橋

玉さまのお獅子はなくほかの歌舞伎役者さんたちでの獅子の精。花道から現れてキメることが多い獅子、よかった!かっこよかった!!毛振りもやはり多いし、これを25日間て大変。玉さまがお獅子でなくてよかった・・・でも去年の幽玄でのお獅子が恋しい・・・という矛盾(笑)貴重だったんだな、あの時は特別だったんだ。今回はうわー!ってあっけにとられていたので誰が誰やら状態で鶴松君とかもどこにいらしたのか全然記憶にないけど今度はちゃんと認識して見れますように。

 道成寺

去年の幽玄では石橋が最後の演目だったけど、今回は道成寺が最後。これには意味があるよ、と聞いてはいたものの、どんななんだろうとまったく予想がつかなかった。鼓童のメンバーの琴や他の楽器で作られる音も、ろうそくの灯りで照らす最初もそのまま。そこに歌舞伎での道成寺のように花道での道行の玉さま花子さん。照明が道成寺とは違って、上手から橙のような色の照明を当てて影が出来る。その照明の色に照らされた花子さんとできた影を見ていると、歌舞伎でのあの明るい中とは全く違うけれど、でも花子さんの心が外に映し出され、埋め尽くされた世界、という感じでこの追加された場面が凄く好き。より世界観を全面に出したような感じがして。鼓童の太鼓とともに花子さんが鞨鼓を付けて踊る場面、三人のメンバーと変わるがわる一緒に叩いていくわけだけど、去年の幽玄と違うのは太鼓の叩き方にバリエーションが増えてる!!よく太鼓の片面だけを両手で打つけど、それを花子さんもしてたぁああ素敵!!この花子さんの良さはどの言葉で表せるのかさっぱりわからない…鼓童のメンバーと合わせて踊る、太鼓をたたく、その様子、視線の在り方行き方、音に乗ったその体の動きすべてを始め何もかもが好きすぎてとても言葉では表せない。花子さんが鐘の中に入ってしまって、あぁ、玉さまの出番は終わってしまった、と思ったら、なんと、なんと、なんと!!!鐘から出てきたのは(去年の幽玄の時の)リアル大蛇ではなく、着物を頭の上から覆っている方!!!この時点で、え?え?まさか、本当に!!ってパニック・・・出てきたのは玉さまが演じる日本振袖始のような姿の大蛇。こう来るなんて、誰が予想しますか!!とくに去年幽玄を観た者には衝撃的過ぎた。そしてそれだけじゃなくて、たくさんのお坊さんはまあわかるけど、それだけではなく桜の花を持った蛇の柄の着物を着た大勢の人達。この方達とお坊さん(だったような)がビシッと交互に入り交じり、その桜の花をもった人たちが鼓童のソロでの演奏を周りで円を描き結果的に盛り立てているし、大蛇の化身という舞台の役としての意味でも、そういった盛り上げの意味でもどちらの役割も果たしていてた。鼓童のメンバーも花道~舞台へならび、叩く太鼓の音が体に響いて凄かった。その花道と舞台の境にいるのは玉さまの大蛇。花道から舞台からこんなに太鼓の響きを受けても動じることのないようなどっしりとした存在感。こんなにもスケールアップしたものに変更した玉さまは演出家としても底知れない力を持った方なんだ、ということを改めて感じたし、歌舞伎座の舞台を余すところなく思い切り、かつ無理もなく、最後は歌舞伎の道成寺を観たときと同じような、それ以上の高揚感を感じさせ圧倒させるような舞台を作り上げていて、本当に本当に、素晴らしかった。ここまでの力をもったものにするということ、「歌舞伎座」での公演としてそれにふさわしいものにするというビジョンの描きかたと信念のブレなささに、もう言葉がない。予想のはるかはるか上をいく舞台、最高でした。