やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

坂東玉三郎 越路吹雪を歌う「愛の讃歌」 4.30  広島・上野学園ホール

始まる前に、前日山口で開かれたコンサートに参加されたらしい隣の席の方の話が聞こえてきて「声がかすれてた・・・」ん?と思ってたんだけど・・・始まって玉さまが一曲目を歌われたものの、あきらかに声の様子がおかしい。声が出にくそうで音程が取りにくそう。声質もいつものようではなくところどころかすれぎみで。あーそうか、昨日から声の、喉の調子がよくないんだろうって、すぐにわかった。

一曲目から三曲目は玉さまのソロ。とくに一曲目や二曲目の間奏の時や終わった後、声をでやすいものに調整しようとされてる様子がわかるし、ほんの一瞬、とても悔しそうな表情をされてる瞬間があって。ほんの一、二回だけど。それでも十分すぎるほど伝わってきた。普段から「お客様に恥ずかしいものをお見せできない」と仰っている玉さまが、声の調子がどうにも悪くなってしまっていることがどれだけ不本意なことか、こちらが思うより遥かに悔しい思いをされているのだろうと。それが想像がついてそのことを思うと悲しいやら悔しいやら、泣けて泣けて仕方なかった。そんな中でも出やすい声の出し方、のどを自力で潤す、など合間合間にされていて、思うように声が出ない中でも、なんとか声が出る状態にしようとされているのがわかり、心配で仕方なかった。

MCでも、身の回りに例えていうと、風邪をひいてのどがやられている時の声、そのような感じで、話すのもお辛そうだった。だけど、そのことに関しては一切触れず、共演の真琴つばささんや姿月あさとさんもいつもどおりにすすめてくれてたからそれはきっと決めていたことなのだと思う。

最初のMCではやっぱり「にぎにぎしく~」と仰っていて、これは定番なのだなぁと。この洋のコンサートでここだけ歌舞伎ぽいのが玉さまらしくて好き(笑)

広島の印象はどうですか?の質問に玉さま「じっと聞き入ってくださっている感じがして」はい、固唾をのんで見守っている、そんなところもあったかもしれないけどじっくり聴く客席だったかもしれない。姿月さんと真琴さんは宝塚の公演で何度も来られたことがあると。玉さまはそのあたりについては仰っていなかったけど。

玉さまは姿月あさとさんのことを「しーちゃん」真琴つばささんのことを「まこちゃん」てお呼びになっていて可愛かった!!バイオリンの会田さんの「ももちゃん」呼びもだけど、そうお呼びになるくらい親しくなられてるのだなぁと。和やかにやっていこうとされる玉さまのお気遣いかもしれなくて、どちらにしろ、緊張感を与えるのではなくそういう親しみの中で一緒にやって行こうとされるお気持ち、お姿が素敵だし、しーちゃんまこちゃんと呼べる関係をつくっていることが何より素敵。

姿月さんが「私達ずいぶん仲良くなって」玉さま「仲良くなり過ぎたっていう」(笑)・・・困るほど仲が良くなるなんて素敵なことでこちらは聞いて嬉しい限り。

姿月さんが玉さまに「去年CDを出されていて、素晴らしくて・・・」玉さま「しーちゃんもCDをお出しになって」姿月さん「いえいえ私のはそんな・・・」姿月さん「真琴さんもCDを」真琴さん「いえいえ私のはそんな・・・」玉さま「私もそんな・・・」皆「(笑)」っていうやりとりがあって玉さまものってくださった(笑)

一幕での衣装のお話。スパンコールがふんだんに使われた生地は玉さまがイタリアを訪れたとき購入したもの。ただ、玉さまの生地は早い段階で購入したもの。真琴さん達の生地はその後にコンサートが決まって注文したもので、生地屋さんはたいそう喜んでくれたそう。でも生地が足りなくて急遽作られたもので後からできたから、スパンコールの粒の大きさが小さくてより光るものになっていると。そのときの様子が真琴さん姿月さんがご自分と玉さまの生地を見比べて、どこが違うのか、あ!粒の大きさが違う!と気づいて、玉さまが「自分の生地より、より光るようになっている」と。姿月さんたちは玉さまは「玉三郎さん自身が光ってらっしゃるから!」みたいにフォローされてたと思う(笑)そのやりとりも普通のお話を聞かせていただいているようで楽しかった。

姿月さんが歌う曲(歌った曲)の曲名を大阪公演の曲名と間違えて仰ってて、大阪でも地方公演用の曲を間違えて仰ってて姿月さんが訂正(笑)どうも姿月さんのこの時の曲名はひっかかりやすいのかと(笑)

今回のツアーでは、毎回越路さんにまつわる違ったことを話そうと決めているとのこと。たくさんの人と会うお仕事をしていて、合わない人もいるときはどうされてるのか聞いたことがあり、越路さんは親しい人(名前を仰ってたけど、ケーキ屋ケンちゃん的な呼び方をされていたけど覚えてない💦)に聞いてもらっていたそう。だけど、そのケーキ屋ケンちゃん(仮w)からは一度もそのお話を聞いたことがなかったと。それくらい信用できる方にお話しされていたのだということ。玉さまも同じようにされてた(されてる?)そう。

二幕が始まって最初に玉さまの「枯葉」。この曲では三枝さんのピアノがとても素敵なんだけど、いつもよりも玉さまに寄り添うような、とてもとても素敵なピアノだった。気のせいかもしれないけど、玉さまが調子が良くない分、いろんなところで皆さんでなんとかできることでサポートしたいというお気持ちが溢れていたように感じた。

二幕では明るい楽しい曲の多いミュージカルメドレーがあったけど、そこからは玉さまはとても楽しそうに歌われてた。ただ単に楽しくというより、一幕までの「声を何とか・・・」というところから完全に切り替えて「この時を楽しく歌う、楽しくお届けする」に軸が変わったような気がする。そのお気持ちがこちらにも伝わってきて、心配してしまう気持ちから曲を楽しめるようになった。そのように切り替えることがどんなに大変なことか。とくに玉さまのように責任感をもって務めてらっしゃる方にとって、そこに軸を移すということは、とても勇気がいることなのではないか、とも思う。でも、そのように軸を変えられたおかげでこちらに伝わるものもまるで変ってきたし、本当に凄い決断だと思う。

二幕では衣装がかわって、玉さまは白い衣装、姿月さん真琴さんは黒の衣装。姿月さんが「今回は素敵な衣装で」とお話になりながらご自分の衣装を少し客席に見せる形でいらしたら、玉さまがおもむろに姿月さんの衣装の腕の所についているフリンジをさわってらして、そのお姿があまりにも自然で無意識な感じが、かわいい!!!(笑)へー、フリンジ、みたいな感じでただフリンジを上から下まで爪側の指でさらっと手でなぞるみたいにされてた(笑)

 玉さまが、越路さんの曲は名曲がまだまだたくさんあって「それはシャンソン、それはシャンソン・・・(何度も何度もこのフレーズを歌って下さった)」てずっとこのフレーズを歌う曲があってこれも素晴らしい、と。玉さま、声の調子が良くないのに、温存しておきたいところなはずなのに、この曲、エピソードを知ってもらうため、トークも手を抜くことをしない。このトークの部分ではそれを強烈に感じたし、他にも、自分の歌う曲を姿月さん真琴さんに唄ってもらうということもなく、徹底してご自身の担当されてる範囲をご自身で勤められていた。曲を歌をこの時間をお客様に楽しんで行っていただくということに関して、本当に手を抜くということがなかった。

「越路さんが居なくなってから岩谷さんと食事して~(詳細忘れた💦)、岩谷さんも居なくなって、今は二人ともいないけど~(ここも詳細い忘れ、この辺りのことをお話しする玉さまを見ていてとても切なかった)、(私たちは)にせものの越路吹雪だけど、大それたことでなく、その当時の人の心意気を知ってほしい」そう仰ってた。

玉さまの声は時間がたつごとにどんどん調子がさらに悪くなって、お話しする声はずっとかすれてしまうほどになっていた。本編ラストの方の「愛の讃歌」、その声の調子の悪さを補うかのように、この曲に込められた気持ちが会場を埋め尽くして私達一人一人にこれでもかというくらい届いた。とくに最後の方、あんなにも伝わる「愛の讃歌」を聴いたことがない。こんなにも気持ちは込めることができるのか、その凄さに圧倒され、それが自分だけでなく周りのお客様方にも届いてその方達も圧倒されているのが肌でわかった。アンコールの「すみれの花咲く頃」この曲は玉さまのソロから始まる曲だけど、あのフレーズは音程をとることも難しいのでは、と思っていたら、両隣の真琴さん、姿月さんに言葉はないまま「一緒に唄って」というように促しながら、最初のフレーズをお二人(真琴さんだったかも)と一緒にお歌いになり、そしてその曲から転調した最後の愛の讃歌では、お二人が「サポートをした方が良いかな、一緒に唄った方がいいかな?」としようとしてると、玉さまは「この曲は大丈夫だから任せて」とでもいうように、手でお二人を抑えるように(力、ではなく、あくまでもジェスチャーでこの気持ちを伝えるように)されていて、舞台上での無言の、プロのやり取り、信頼関係があるからこそのこのすべてに、本当に感激した。

そして、アンコール終わってすぐに客席がスタンディングオベーション。どんどん、「私も立ちたい!」っていうきもちでいる方がそれを形にあらわして行って、その波は会場全体まで伝わり、こんなにも心が温かな、決して同情的ではなく、感じた素晴らしさをただただ届けたい、その思いでいっぱいの拍手に包まれたとてもとても感動したカーテンコールだった。こんなにも気持ちのこもった、抑えきれないほどの思いの拍手は聞いたことがなかった。このカーテンコールを体験して、今日一連のことがあり、今この場に居ることはとても幸せだし、玉さまを初め舞台上の人達にもこれはきっと伝わっている、そう思ったしそうであってほしい。心配をして、聴いた人からの評価がどうかを気にしてたことがバカみたいだった。もっと、人は心豊かで信頼できるもの、それを痛感したし、観客として、この時のお客様のようなこころの目を持っていたいし、そこを感じてこんなにも素直に表せる、そんなお客になりたいというのが今後の目標になった。この場に居られて自分はなんて幸せ者なんだろう、そう感じさせてくださったこの日の出来事、皆さまに感謝しかない。