やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「坂東玉三郎 映像×舞踊公演」口上その3 八千代座 11/2,3,4

〈稲舟について〉

  • 稲舟で使う打ち掛けを、他の小道具も玉雪さんが持ってきてくださったけど、玉雪さんが持ってきてくださって使い終わったあと、玉さま小さい声で「ありがとう」って。玉さまのような立場の方でそういう一言が当たり前に言える方はなかなかいらっしゃらないんじゃないのかな・・・。こういう些細な所にお人柄が表れてて。 で、その打ち掛けの話。玉さまはお若い頃、に浮世絵全集という、毎月一冊ずつ送られてくる、そういったものを購入されていて、その当時はご自身の楽しみで購入されたけど、後々役立ったそう。その一つが稲舟。この曲で使う打ち掛けを作るのにその浮世絵全集を見て、それに出てくるまんま(かな?)のお着物を作られたとのこと。出来上がっても、これは本当に綺麗なのかしら…と思ってたけど実際すべて合わせて着てみると、やっぱり見事だったと。
  • 荻江露友先生の唄を使いたかったが、映像にただ張り付けただけだと着物の裾をする音などが入らなくなってしまう(上書きされ消える)。なのでその場で音が流れているようにするため、収録の際にその唄を実際の演奏場所、上手側から流し、玉さまから発せられる音も含めすべての音を同時に録音したそう。
  • 裾さばきをどうするか。裾の後ろ、真ん中辺りを蹴る、のだそう。あんまり何度もやると美しくないので、と。歩くときに膝が当たるお着物の内側を押すようにする(と、空間が出来るためかな?歩きやすい、とは仰ってなかったけどそのような実演)また、歩きやすくするために前がわでどうにかしようとすると、綺麗な動きにはならない。歩幅を取った時、後ろに残した足と前足との幅を大きく取ると、空間が大きくできるからか、歩きやすくなるという。裾の先まで意識して(そのようになっているか把握しているというような)いなければいけない。
  • 打掛を外した時、左の袖から抜いて中のお着物の袂をくるっと巻きつけているような、あの一連の流れは美しすぎた・・・。
  • 稲舟は全部踊ることができるけど、今回の趣旨に合わせて映像とのコラボにした、とのこと。
  • 遊女が眠っているところから始まり、墨をすることでさえ音が漏れるのではと、思うような夜更け~夜明け、暁とおっしゃってたかなぁ、その雰囲気を感じていただけたら、というような感じのことを仰っていたような。ちょっとうろ覚え。

配られたアンケートに、「稲舟は全部見て観たかったです」って書いてしまった次の日に「稲舟は全部踊ることができますが~」のお言葉が。まさか、アンケート、ご覧になったんだろうか・・・って一瞬凍った(笑)ご覧になってないかもしれないけどひたすら申し訳なかったなぁ。稲舟は全部おどることは可能なんだろうと思いつつ、正直に書いてみたら、こうなった(・・;)踊れるのに趣旨の為に踊らない、という選択をされてる、よく考えればそうなんだけど、玉さま見たさに、そこまで考えなかった。玉さまはそこまで考えていらっしゃって、自分の考えの浅さを思い知ったよ・・・。それにしても打掛をまとう玉さま、素敵だったなぁ。

<鷺娘について>

  • 鷺娘では傘を二本使ってることって皆さんご存知かと思ってたけど、そうでもなみたいで・・・のように仰って、客席に向かって二本使ってるのを知ってる人、とアンケート、挙手少なかったので「よかった、話甲斐があります(笑)」とにこにこ。直前に知ってたけど、知らない人になって一からわくわくして聞いてみたかったので手を挙げなかった(笑)玉さまの説明をじっくり聞きたいから、と、ほかにもそういう方いらしたと思う(笑)最初に持っているのは透けている紗の傘(紗はこの字なのか・・・違うかも)もう作れる職人さんがいないとか。だから、もう切れてる(薄くなってる?)ような部分があるって言われて、今もそうなってるけど、お客様からはわからないのでそのまま使ってます(笑)、と。傘を持って、笠を指す場所を探している時、こう横から見たら(傘を持った手と傘で)くちばしのように見える、そういったこともあるのでは、と。傘を落とした時にもう一本の傘の方を手に取っていて、そちらの方は透けない傘。引き抜きの時に見えないし、紙の傘だから、空中でふわっと宙に浮くことができる、紗の方も同じようにしてみてくださったけど、こちらは全然ふわっと浮かず、すぐ落ちてきてしまう。
  • 実際の鷺の真似をそのままするのでなく・・・例えば川に鷺がいる時、時折動きがとまっているときがある。もしかしたら魚を探してるのかもしれないけど。・・踊りの中で袖口に手を隠しくるっと丸めてふっと止まる動き、それがそんな風に取り入れられていると。四日の日玉さまがこの話の時、「(後半の地獄の責めの時の激しい舞のこと)こう、バタバタするだけが(のが?)鷺ではない」見たいなことを仰ってて(笑)そこ!そこ見どころで好きな方が多いと思うし私も好きだけど、思いっきりバッサリ斬られた(笑)!!!これからそこを見るというのに(笑)!!!・・・四日の最後の日、気合入れて、よし、見よう!と思って意気込んでたけど、こうご本人から言われると(笑)・・・。玉さま、たまにこうびっくりするところでバッサリ斬るから油断ならない(笑)
  • 踊る、演じる時の体がどのように在るか。腕を伸ばしすぎていてもだめ、脇を閉め過ぎていてもだめ、そのほどよさが大事なのだそう。確かに、腕をまっすぐ伸ばしている時はロボットのようで、しなやかさ皆無だった。それを維持して踊るということも体力筋力ともに必要なことだから、見た目以上に大変なんだろうなぁ。

昼の部か夜の部か忘れてしまったけど、仕舞いにすることについて、「私が恥をかくからやらない、のではなく、お客様の夢を壊さないため」と。そこははっきりと強く仰ってた。そう言い切れることが凄いことだと思う。