やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「坂東玉三郎特別公演」 南座@京都 3/21,22,26 <太刀盗人><傾城雪吉原>

<太刀盗人>

盗人の九朗兵衛役の彦三郎さん、自分の刀を盗まれそうになる万兵衛役の亀蔵さん、

二人を詮議する代官の吉之丞さん、その従者の玉雪さんの四人。

亀蔵さんの踊りを真似る彦三郎さん。亀蔵さんの踊りもきっちり踊っていて好きだし、それをくずしつつびしっと踊る彦三郎さんがまた上手くて、そういう役って、笑いを狙って外すと痛々しいけど、彦三郎さんが狙い過ぎてないのにきめられる人だから面白い。それが面白く見えるためには、亀蔵さんの律義さも必要で、そこもしっかりあらわされていたし、本当に安定して観られる楽しさだった。

そこに、二人の証拠のみせあいを見ていることに飽きたり耳が遠くて聞きなおしたりする代官吉之丞さんのとぼけっぷりも可笑しかったし、従者玉雪さんの役のきっちりさと真面目に聴いているのかうんざりなのかというところ(笑)このお二人も雰囲気がとても合っていて、この四人の方達を見ているのは予想を超えて面白かった。

彦三郎さんが花道で自己紹介を兼ねたセリフを言うとき、自分が花道寄りの席だったときには、そのお声が重忠の時以上にダイレクトに聴こえて、そのお声のとんでもない良さと、うるさく感じることがないのに凄く大きい声、それがあまりにも凄くて感激して、それだけでも幸せだった。声を聴いただけで人が幸せになれるって凄いことだと思うし、そのもともとお持ちの声もそうだけど、それを美しく届けられることがまた凄いことだと思った。彦三郎さんは、お声だけでなく、そのコミカルな動き、踊り、くるくる変わる表情が見事で、こんな幸せな演目を見られて、そしてこの役者さん達で見ることが出来て本当によかったなぁと思った。

 

<傾城雪吉原>

最後の玉さまの演目。暗い舞台上にキラキラ光りながら降る雪。勝四郎さんの唄が響き渡って、雪の世界を作る。しばらくすると、舞台中央のセリが押し上げられ、傘を差した玉さまの傾城が現れる。

歌舞伎座の時は、最初から舞台上にいらして、照明を当てていくことで登場にしていたと思うのだけど、南座は恐らくもっとコンパクトな劇場だから、最初からそこに居ても距離が近くてわかってしまうようなところがあるから、最初は舞台上にいらっしゃらないことにしたのかな、なんて思った。ただ、南座のそのセリを動かすときのモーター音みたいなのが大きくて、そこがね、一瞬現実になってた(笑)

途中から長唄の方々の前にある透けるスクリーンのようなものも上に上がり、皆さんのお顔も見える。勝四郎さん、勝国さん、傳左衛門さん・・・玉さま公演の時のベストメンバーの方々がずらっと並んでらっしゃるとやっぱり圧巻。

傘を差して登場した傾城、寒さの中で打掛を羽織りながら歩く姿。傘に積もった雪を、とん、とん、と静かに下ろすとき、寂しさと美しさが同時にある。恋文を手にするとき、その恋文の生地が透ける素材でできていて、その透け感が儚さと傾城の想いを表しているようで本当に美しい。春夏秋冬を表す様子、傾城がそこに居て、ふと視線をやるとき手が動く時、そこにその情景の空間が創られる。夏の暑さには暑くて汗をぬぐい、秋には虫の声に耳を澄ませ、冬の寒さに手を温め寂しげな表情で佇み、春を待つ傾城。これらすべてを瞬時に創り出し、見えないのに感じさせることの出来る玉さまの凄さ。

この時も阿古屋と同様、思考は置いといて、ただ目の前のものを感じよう、とそうしていたらふわーっと、なにかがたくさん自分の中に入ってきた。名前のつかないその何かを感じることで、こんなに満たされて幸せを感じるのかと思った。

 

<カーテンコール>

全ての演目が終わってもなりやまない拍手。大向うの方はいらしたけれど、声を出すことはなく(そう示し合わせてかそのように他の時もされてるのだと思う)皆で拍手で玉さまを待っていたら緞帳が開いて、玉さまがでてきてくださった!!先程の傾城の拵えで座ってお辞儀をした状態で迎えてくださった玉さま。お顔をあげて、上手、下手、正面と全体を見てくださる。その時の玉さまの表情を見ていて、私達が届けたい想いが届いていて、玉さまが受け取ってくださっている、それをみてまた私も嬉しくて、ただ「カーテンコールがあって特別感があって嬉しい」とかではなくて、玉さまと心で通じ合えた感覚があったこと、じんわりと心が温かくなる感じがしてそれがなにより嬉しかった。幕が閉じられても拍手が鳴りやまず、玉さまの二度目の登場。今度は立ってくださって、上手の方、下手の方に来て皆を見てお辞儀をしてくださった。そのあとに下手にお座りになって、後ろの長唄連中の皆さま、関わるすべての方に拍手をお願いします、といった手の仕草で、私達もさらにさらに大きな拍手を送り、幕が閉まりました。本当に本当に幸せな南座だった。またこの劇場で、玉さまを拝見したい、心からそう思った。

 

<イヤホンガイド英語バージョン>

日本語バージョンは聴いていたのだけど、「英語バージョンは冒頭に玉さまからのご挨拶が流れる」と知り、居てもたってもいられず借りた(笑)

玉さまは、日本語でお話されるときと同様に低めの落ち着いた声でゆっくりめに、日本人が聞いてもわかる、おそらく外国のひとが聞いてもわかる、そのような発音の英語で話してくださり、玉さまの声に聴き惚れて全文は覚えてないんだけど確か自己紹介と(Tamasaburoとは仰ってた!)、劇場へようこそ、か楽しんでいってください、か何かそのような言葉(Theaterとは仰ってた!記憶がアバウトすぎるw)をお話されてて、聴くことが出来て満足でした。

今、玉さまのスペル確認に公式を見てきたけれど、世界のうたのPVがトップに張り付けられてるのを知って思わぬところで幸せだった(笑)