やっぱりLiveが好き

目の前の空間を味わうのが好きな人の記録🍀

「坂東玉三郎 初春特別舞踊公演」大阪松竹座 1/17,18,25,26

松竹座で約ひと月、玉さまの公演だなんて特別だしこんな幸せなことないなぁと思った今年の一月だった。行けたのは四回だったけど、十分楽しませていただいた!

自分の初日まで、長かったー。もう「明けましておめでとうございます」も聞けなくなった17日(泣)やっと大阪へ。

二階のロビーにはおっきい全演目の玉さま、壱太郎くんのお写真パネルが!!

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このお写真だけで幸せなんだけど、それだけじゃなくて、口上そして壱太郎くんの鷺娘含めて4演目。こんなにやっていただいていいんですか・・・最初演目の数見たときに驚いた。こんなにあるのに2時始まりで5時終わり。大変だっただろうなぁ。

一、お年賀 口上

私の行ったときはすでにお年賀ではなかったけど、下手に壱太郎君、上手に玉さまがお出迎えの口上。壱太郎君は小さくてかわいくて、動きがきびっきびっとしながらも柔らかさもあってすごく良かった。口上でのご挨拶もとっても滑らかで、ご当地松竹座で演じられることの喜び、玉さまと接する中で、衣装、鬘・・・関わるすひとつひとつに気を配り、周りの方を大切にする姿勢など、とても尊敬してらっしゃることがよく伝わってきた。常々祖父から上方歌舞伎江戸歌舞伎の両方の隆盛がなければいけないと、言われてきたことも仰っていて、壱太郎君の背負っている物を感じずにはいられなかった。つい先ほど、玉さまが本公演で踊られた年齢と今の自分の年齢が一緒だということがわかった、と仰っていて、単なる偶然でなく運命的なんだなぁという感じがして感慨深かった。そして千穐楽。鷺娘を25日間演じ続けることができたことへの喜び、感謝、そしてこれからも鷺娘を踊り続けていきたいということ、この公演は人生での大きな一節になるだろうということ、これからも精進し続けるということを力強くお話しされていて、真面目で誠実なお人柄に心打たれた。こういう方が玉さまと共演で嬉しいし、このひと月間で玉さまととても良い関係を築かれたのだろうなぁということを感じられる千穐楽の口上だった。

玉さま。少しお顔がすっとされていて、これだけのものを毎日演じることはとても大変なんだろうな、と。でもお疲れの様子は微塵も感じられず、張りのあるお声、上手、下手、正面、会場全体をご覧になる様子も本当に上から下まで遠くまで全方位見ていらっしゃるように見えて、活き活きとしたとても素敵な表情をされていた。連日たくさんのお客様がいらしてくださるということへの感謝、壱太郎さんが仰っていたように、たくさんの人に支えられて舞台が成り立っていて、中には一生お会いすることなく終わってしまうかたもいるということをお話しされていて。

壱太郎くんの鷺娘は、なかなか演目が決まらなくて、詰め寄りましたら(笑)鷺娘をやりたいということが分かった、と。上方歌舞伎江戸歌舞伎が力を合わせて、のお話の時に、「私はどこからのもの・・・というのもありませんが(笑)江戸出身なので江戸の・・・」と仰って江戸歌舞伎を名乗るのに躊躇する玉さまがかわいい(笑)

三月には歌舞伎座で壱太郎くん主演の滝の白糸が上演されること、シネマ歌舞伎「五人道成寺、二人椀久」の上映が続いていること、五月にはフェスティバルホールでコンサートがあり、下見に行ったが立派に立てなおされていて少し不安になったことも仰って、ちょっと可愛らしい!という感じでそれを聞いた客席が湧く(笑)玉さまが照れる→私たちが喜ぶ(笑)

毎回口上の最後に「篤く、篤く、御礼申し上げ~」のところ、篤く、の時にすごく力が入っていてらして、お気持ちがよく伝わってきた。玉さまがキリっとした表情とお声でお話ししてくださる今回の口上も毎回大好きでした。

 

二、元禄花見踊

歌舞伎座での元禄と同じように、暗闇の中、玉さまがほんのりとした灯りのなかで踊るお姿がやっぱり素敵。壱くんは、かなり柔らかく踊れる方で、あまりの体の角度に驚いた。ぐいっと曲がるというか。踊り自体もはっきりときびきび踊られるので余計そういう柔らかさがわかるんだよね。

玉さまが花道に出て来られて、「あ、ここまで来ちゃった」っていう風に気づいてお辞儀をされるのがなんとも可愛くて!!!!!花横で観れた日にはあまりの素敵さに倒れるかと思った・・・。もうあの感激、素敵さは実際受けないと!射抜かれるってこういうことなんだわ・・・。

あと花びらをとって、ふっと吹くところもあんなにも絵になるかたがいるんだろうか。紐をもってサッサッと踊られるところも壱くんと踊るところも素敵。

 

三、秋の色種

花道から登場される玉さまが、あまりに静かすぎてまず気づけない💦花道のライトがうっすらつき始めたなっていうようなときに振り向くと玉さまが登場されるんだけど本当にいつのまにかふわ~っと登場されている。その静かな雰囲気のなか花道で踊られたあとに中央の舞台へ。そして花道から壱くんが表れてお二人で踊るんだけど、壱くんと玉さまは絵になるほどの姉妹感。お着物の色も玉さまの薄い紫に壱くんの薄い橙も素敵でなぁ。扇子を使いながら、手を取り合いながら、玉さまが前で膝をついての姿勢、壱くんが後ろで立っての姿勢とか、どの瞬間も美しい。壱くんは元禄と秋の色種の時、どう見ても女の子にしか見えなくて。それで踊りになると体がしなやかに物凄く動くから毎回あっけにとられてるうちに終わっている・・・

秋の色種は、踊りの他にもお箏が!!玉さまと壱くんがお箏を弾く・・・玉さまのお箏を弾く姿が見られるなんて、それだけでも大阪まで来る甲斐があるというもの。玉さまが舞台中央より。爪をはめる時の指を舐めるしぐさが見えないように手で隠されてはめていくのがまた美しい!!あの間もたまらない(笑)

玉さまのお箏を弾く姿は、手で卵を掴むよりもっと柔らかく持つような丸みを帯びているんだけど丸すぎずない手の形で、それがとても美しくてまるで力を極限まで抜いて弾いてらっしゃるように見えるし、指の動き自体が滑らか。ずっと観ていたかった。弾き終えて爪を外すときはほんとに一瞬で、またあの美しい瞬間が観られるのかと思って待っていたら終わっている(笑)ササッっという感じ。

お箏を弾いている=ずっと舞台上にいらっしゃるから歌舞伎座のときのように黒いお着物にお着替えする時間はないのだけど、あのお箏を弾く姿を見られたら何も言うことはないです。幸せ。ススキをパチンと切って植えるお姿、虫の音色に耳を傾ける姿もやっぱり素敵で、風情あるこの演目はまたどこかで拝見したい。もちろん玉さまのお箏の演奏ありで。

 

四、鷺娘

玉さまの演じられる鷺娘が大好きで、壱くんの鷺娘はどんなだろう、と楽しみでもあり複雑な気持ちでもあった。一番大好きな人でその演目を観たい、という欲がやっぱりあるから。でも、これは壱くんの鷺娘になっていた。ポスターでのお写真の時から、玉さまの人ではないような美しい娘とはまた違う、人間のとても可愛らしいお嬢さんになっていたのが壱くんの鷺娘だった。こんな愛らしい子しなせたらだめでしょう!って思うくらいの(笑)壱くんがブログで書かれていた、鷺娘のそこにいたるまでのエピソード、理不尽にもころされてしまうその子の儚さが表れていたと思う。雪の量が少ないなって最初に観たときは思ったけど、最後には増えていたようにも見えたし、雰囲気も良くなってた。後見の方が大活躍されるこの演目で、この大作でのサポートは本当に大変だったろうなぁと思ったし、玉さまの鷺娘でのその様子を思い浮かべると、何十年と演じて来られて、あんなにもスマートに衣装替えをされることは月日やそのお相手同士の息の合い方もとても重要なんだなってこと、いつも見慣れていることがいかに大変かがよくわかった。最初に観たときと、千穐楽では、ゆとりの持ち方が違うと思った。最初にはあまり感じなかった余裕、着地点がここだからこれまでにこうする、それが終わった、というゆとりを千穐楽には感じられて、回数を重ねること、それがこんなに進化するんだなぁと、そこにも感激した。

 

五、傾城

三階から眺める景色は圧巻だった。真っ暗闇の中で灯る提灯の数々。舞台から客席端まで続くその赤い灯りが、こちらの頬も赤くするくらい高揚させてくれて、これから始まることへの期待と、町の風情のリアル感、そのあたたかさに感動で胸いっぱいになる。玉さまの演出は、人の気持ちをこんな風にさせてくれるから大好き。

そこからぱっと明るくなって始まる花魁道中、目を見開きたくなるほど鮮やか。中央に玉さまがいらっしゃって、功一さんの肩に手を置いてゆったり歩かれる。男前な功一さんですからね、それはそれは絵になる・・・。高下駄で八文字を描きながら歩かれると、さらにこの方の特別感、存在感に圧倒される。この道中が終わってほしくない、っていつも思う。街並みの風景も素敵なんだよなぁ。こういうところが昔はあったんだろうなぁって、懐かしいのとは違うけどそういう気持ちになる。道中が終わり、またふわっと暗くなりお部屋の場面へ。

背中を向けて、たっぷりとした豪華で本当に素敵なお着物を羽織ってらっしゃる姿がとてつもなくかっこいい。蝶々と戯れる様子も、こういうお仕事をされていながら、一人の可愛らしい女性であることが感じられて何とも言えない気持ちにもなる。玉さまがくるっと回転されるときとかに蝶々(の棒)もクロスさせてらっしゃるんだなあと。

間夫とのやりとりの場面も、表情が移り変わりが好き。夏の場面も団扇をふんわりと持つ手と団扇でうごく空気の柔らかさが感じられるのが大好きで、そして冬。黒い打掛を 羽織って後ろの襖があいた雪景色、それから最後の斜め後ろを向いた玉さまのかっこよさったらない!!そしてもう一度、中央で遠くをみる玉さまで幕。

艶と艶やかさと圧倒的な存在感とその合間に垣間見られるひとりの女性の心も、どれをとっても素敵だった。

 

カーテンコール

単発の地方での公演とは違って、歌舞伎座公演のようなものだからカテコはないかなぁと思ってた。だけど、拍手がいったん終わるかなと思ったけど途中で盛り返して拍手がだんだん大きくなり、皆の拍手が揃って幕が上がった!!!そこには傾城の黒い打掛の玉さまが座ってらして感激!!玉さまがお辞儀、そして立ち上がろうとされたら、なんと幕がおりてしまう・・・いやちょっと今の玉さまの動きを見たら閉めるのは無しでしょうと正直思った・・・。スタッフさん、動きをよく見て(泣)そして鳴りやまない拍手に再び幕が上がり・・・壱太郎君は用意はしていなかったらしく、鷺娘ではなく元禄の衣装で登場。玉さまに、少し前に出て、と促されるも、?ここ・・・ですか?って戸惑っていて可愛かった(笑)もう少し中央でお二人が並んだ時も、手を差し出されるも居所がわからず戸惑う壱くん(笑)そしたら玉さまのほうからきゅっと寄り添って玉さまがご自分の打掛の中に壱くんを招き入れる形に!!打掛の右側をふわっと開いてそこに壱くんが入り再びふわっとかける形だったような。玉さまもうふふって笑ってらっしゃった気がしたけどなぁ。鼻血でるかと思ったー!!こんな心温まる、そして鼻血な(笑)素敵な瞬間に立ち会えたことが幸せ過ぎた。玉さまもにこにこ微笑んでらしてなぁ、これを幸せと言わずに何を幸せと言うんだろう。そんな奇跡的な場面もあり、とてもとても温かいカーテンコールだった。玉さまは後ろの長唄囃子連中の皆さまにも一礼と、拍手を、という手の動きにこちらも大きな拍手で応える。きっと見えていないすべてのかかわった皆様への拍手なんだろうなと思う。

 

イヤホンガイド・インタビュー

今回のイヤホンガイドは、幕間に玉さまと壱くんのインタビューが聞けるというそれはそれは特別な放送で。イヤホンガイドでは玉さまが「明けましておめでとうございます」と仰ってたので、お正月気分は味わえた!

演出のこと、お箏のこと、衣装のこと、など色々お話しされてたけど、お休みの時に何をされてますか?の質問のときに、壱くんが「ダイビング」という答え。大学が湘南方面だったためにその辺りで潜っていた、という話だったと思うけど、そのお話が出ると玉さまはご自分もダイビングをされるということ、壱くんの湘南の話から、私も伊豆・・・(大体)湘南で同じ、という話で、湘南と伊豆、だいぶ違うなぁと思ったけど(笑)ここは関西、ざっくり湘南、ということでお話ししてくださったんだろうな、と思う・・・(笑)クイズもあって、当選の方にはサインプレゼントもあったし、またこういう企画があってほしいなぁ。なによりイヤホンガイドを聞いて、演目をより知るきっかけになるし。この時も舞踊の解説を聞いて、この振りはこういう意味なのか、と初めて知ることも多かったので、またお願いしたい。